第2話 小さな大きな掛け違い

 そろそろ年が明けるというころ、出産の報告が入ってきた。このあと通常通りならお披露目の義が行われ、跡継ぎの誕生を王国でまとめてお祝いするのが習わしらしいが、お披露目の義の日程のお知らせが待てども暮らでども来ない。


 執務室で、デモンズが首をひねってる。

「どうしたんでしょうな」

「前はどうだったの?」

 と僕が聞くと、デモンズが答えてくれる。

「いやー、大変でしたよ。出産したらすぐに日程が決まり、それから1カ月かけて準備してお祝いしましたからね」

「そうなんだ」

「でも、今回は全く連絡がありません。おそらく母子の容態が悪いとか、そんな話じゃないですかね・・・」

「まぁ、田舎者には関係ないけどね」

 そうともいかんでしょ。とデモンズが言ってた気がするが、その当たりはあっさりと無視した。


 そんなこんなで何日か過ぎるころ、ポルコが僕を訪ねてきた。

「こんにちは、坊ちゃん」

「ポルコさん。どうしました」

 いつもながらぽっちゃりとしたおなかを支えながら、訪ねてきた。

 そして僕を直接訪ねてくるとなると、なにか情報をお教えてくれる時だ。

「なにか情報があるんですかね?」

 と聞くと

「さすが坊ちゃん。察しがいいですな。わたしはこう見えても手広く商売をしておりまして、北は地の果てデバンド山脈、南は海の向こうダイス共和国、東は日の登る地、ジパング、西は日の沈む地、ズイまで、裸一貫から商売を起こしまして〜」

「本題は何?」

 どこぞの浅草のおっちゃんバリに長くなりそうなので、話をぶった切る。


 ちなみに彼が言ってる国の名前は全部デタラメで、口上を述べる度に国名が変わったりする。裸一貫から商売を起こしたというのも嘘で、この領で代々続いている商家を継いでいる。いつだったか「裸一貫から商売を興し、今年で500年の商家をつくり」と言ったこともあった。流石にそのときはあんた人間だろと突っ込んだんだけど。


 あら残念とポルコが呟く。

 そして少々不満そうに続けた。

「わたしは王城に納入してる商人ともお話が通じてましてね。まぁ商人というのは持ちつ持たれつなものでしてね」

「それで?」

「俗に言う『赤ちゃん用品』の納入が増えてるそうです。それも最高級品の」

「王太子が生まれたんだから当たり前じゃないの?」

「生まれたと大々的に発表があったのは男子一人です」

 僕は『知ってる』と頷く

「しかし納入されてる『赤ちゃん用品』の量が、1人分には少々多すぎましてね」

「ほう」

 僕は目を細めて、しばし考える。

「どうします?」

 ポルコが楽しそうに聞いてきた。


「いままで通り、いつものように、でお願いします」


 何してんねん。ステファニー嬢の顔を思い浮かべながら毒づいてみた。

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