幕間 領都へ
アイギスでの話し合いが終わり、カクル(ミズハ領の首都)に向かうことになった。僕に同行するのはデモンズとリタとアリス嬢達の計五人だ。
アイギスの西の門をくぐると
「電車?」
アリス嬢が固まった。
「これは魔動車というのです。ロイス様が作りました!」
リタが胸を張ってドヤ顔でいう。
「なんでこんなものがあるんですか?」
「まぁ色々と作りましてね。とりあえず中へ」
そういって促した。
アリス嬢は首をひねりながら、アリス嬢のお付きの二人はおどおどしながら、乗り込んだ。
魔動車が出発する。
客車が2両、貨物車が4両、動力車が前後に2両あり、1両の大きさは通常の馬車の、横幅は1.5倍、長さ三倍はくらいである。
「広いですね」
客車を一両丸々借り切って移動する。さすがに一緒に混ざってはまずかったのでそうした。ちなみに関係者がすべてこの車両に乗ってる。
「まぁ、馬車に比べたらかなり広いですね」
「どのくらいで領都につきますか?」
「なぁ半日弱ってところですかね。ちなみに馬車でいくと一日強かかります」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をというのはこういう事を言うのだろうなと、アリス嬢達の顔をみる。
「あと、冷凍庫もどきもあります。まぁ温度調節もできませんし、かなりでっかいですがね」
アリス達が顔を見合わせる。そしてスティーブが質問よろしいかといったあとに
「これは王に報告したのですか?」
と聞いてきたので
「しましたよ。父が報告しました。しかし田舎者の公爵の話なんぞ聞いてられないってことで、丁寧に無視されたそうです」
「しかし、王をご招待すれば・・・」
「来たくないという人を無理やり来させてもしょうがないでしょ。別にこっちは困りませんしね」
はぁ、というような。理解できないような、あきれたような、そんな返事が返ってきた。
魔動車はのんびりと進んでいた。
そろそろつきそうというところで、アリス嬢のメイドが話しかけてきた。
名前はたしかライラとかいった。
「公主様、聞いてもよろしいでしょうか」
僕が無言でうなずくと
「ありがとうございます。公主様の領は田舎で、人も少なく、さびれているという噂でした。しかし、アイギスといい道行く人たちといい、そんなにさびれているとは思えませんが・・・」
と聞いてきた。
「僕の領の住人はそんなに数がいるわけではありませんよ」
「しかし、アイギスにはたくさんの人がいました・・・」
「ああ、確かにたくさん人がいましたね。そこにいたのは、冒険者と商人と流民の方々ですね。あとは亜人の方々でしすね。彼らは『住人』として数えてないようなのでね」
「え?」
メイドの少女はポカーンとしている。あらかわいい。
「ちゃんと王都にも報告してますよ。亜人の方々がきてお仕事してます。流民も来てお仕事してますってね。彼らは食べるためにお仕事をしてます。お仕事をしてるので税金も払ってもらってます。簡単ですね」
僕がしれっと話す。
「あのー」
アリス嬢がおずおずと話に割り込む。
「王への上納金は?」
「ちゃんと払ってますよ。あっちがいうお金を」
「それってどのお金ですか?」
ちょっと踏み込んできたので、デモンズと目線を合わせて
「王が払えと言ってきたお金です」
と断言して、とびきりの悪い笑顔を見せた。
アリス嬢がそれをみると、何かを納得したらしく
「なるほど、ちゃんと払ってるんですね」
とわざとらしく大きな声で肯定した。
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色々と書こうと思ったのですが、冗長になるので省きました。
下は物語にはあんまり関係ないけどっていう話です。
*補足
魔動車:
時速30キロ~40キロくらいで、技術者が5~6人張り付いて動かしています。
冷凍庫:
小さくても4畳の部屋に収まらないくらいの装置が必要なので、魔動車でなければ運べないし、運ぶとしたら丸々4両丸々冷凍特化にしないとだめ
という設定にしてます。
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