第9話 アイギス 後編

 少し待つと、アリス嬢とデモンズが会議室にはいってくる。

 アリスとその共の人たちがエルフとドワーフと獣人を見ると一瞬足を止める。

 王国内では、というかこの領以外では見ることはないため、半ば伝説と化してるからだ。


「どうしました?」

 僕が聞くと。

「いや、亜人とやらは見たことがなかったもので」

「まぁ、なかなか見るものではないですからね」

「しかし、なぜ彼らがここに?」

「彼らはわが領の同盟国です。そうなった経緯は後程」

 スティーブがなにか言いたそうだったが、右手を挙げて黙らせる。

 そして着席を促す。


「さて、ここに集まってもらったのはほかでもない。これからのことを話すためです」

 一呼吸

「まずは事の経緯を話します。事の発端は王子がアリス様との婚約を破棄して、ステファニー嬢の婚約を発表したことに始まります。普通なら絶対に起きないことですが、なぜか起きてしまいました」

「原因は?」

 エルフィーが聞く

「わかりません。突き止める気にもなりません」

「わかった。続けてくれ」

「問題なのは3人の公爵と1人の王弟です。彼らはほぼ確実にステファニー嬢に惚れております。そして、もっと問題なのがステファニー嬢がそれを楽しんでいることです」

ー楽しんでる?ー

 ほぼ全員から疑問の声が聞こえた。

「はい。『イケメン5人から求められてる私って罪な女』ってなところでしょうかね」

「最悪ですな」

 とデモンズ。ほかのみんなも『うへー』って顔になってる。

「でも、男どもはなぜそんなのに惚れたんだ?貴族様なんだからよりどりみどりなんだろ?」

 クレスが聞いてきたので

「憶測になるのですが、多分、やらせたんでしょ。『本当に愛しているのはあなただけ』をやられたら転ばない男はいないでしょ。しかも10代後半なんて《ピー》なことしか考えてないですからね」

 そういうと、男どもは一斉に伏し目がちになる。

「まぁ、そんなことより、いまから我々がどうしなければいけないかということです。おそらく国内はとっても酷いことになります。そしてこの領の人々の命に係わることがおきるかもしれません」

「なにか確信が、あるのですか?」

 アリス嬢が聞いてくる。


 僕はうなずく。

「この街の名前はアイギスといい、僕が無意識でつけたものです」

 知ってますよね?というとアリス嬢達を除く全員がうなずく。

「前世の記憶があるとは皆さんに伝えています。そしてこの『アイギス』というのは前世の世界でのとある神話に出てくる盾の名前だったんです」

「盾?」

 ほぼ全員が首を傾ける。

「はい、盾です。最高神が戦いの女神に渡した盾でして、あらゆる邪悪・災厄を払う魔除け盾ともいわれてます」

 デモンズが

「それが・・・」

 どうしましたか、と言いかけて言葉を失う。

「この場所に、王都との境目に、『あらゆる邪悪・災厄を払う盾』を意味する街を作りました。国境ではありません。王都とわが領の間にです」

 

 水を打ったように静まり返った。


「つまり・・・」

「ということは・・・」

 各々が呻くようにつぶやく。


「はい。これからとんでもなく酷いことが起こるということです」


 それだけいうと僕は黙った。だれもなにも言葉を発しなかった。

 嘘であってほしいという思いと、この若い当主のスキルに外れはなかったという実績が混ざり合っていた。


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ようやく一章 の終わりです。 いやーながたった、きつかった。

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