第8話 アイギス 前編

 アイギスの領主の館に到着すると、メイドのリアが出迎えてくれた。

「ロイス様、お帰りなさい。あと当主就任おめでとうございます!」

 リアは僕より2歳下で、頭一つ小さい。そして、元気いっぱいな女の子だ。

 もう10年近い付き合いになる。仕事も完璧とはいわないまでも必要にして十分だ。

 そして僕のことを名前で呼んでくれるのは彼女だけだったりする。


「ありがとう。みんなは集まってる?」

「はい、フランク様とクレス様はすでにご到着されております」

「そうか、あとからデモンズとアリス様がこられるから、つれてきてね」

「わかりました!」

 ビシッと敬礼した。


 僕が会議室(のようなところ。『機密のお話をする場所』として作った)に入る。

「当主就任おめでとうございます」

 そう声をかけてきたのは、この街の領主で名前をフランクという。禿で出っ歯で近眼だが、軍の指揮は天才的だった。

「ありがとう」

「似合いませんな。しかしこれからはあなたに変わらぬ忠誠を誓います」 

 そいうとフランクはまた頭を下げる。なかなかの偏屈なところもあるが結構律儀である。

「よう!」

 フランクに続けて男性が挨拶した。名前はクレス。わが領の唯一の港町、コウベの領主をしている。僕より頭一つ分大きく、日に焼けた真っ黒な肌を持っていた。

「坊ちゃんも偉くなりましたな」

 ガハハハッと笑いながら

「おめでとう、とは言ってくれないんですか?」

 そう聞くと、

「そうだった、そうだった。おめでとう、坊ちゃん」

 と言いながらバシバシ叩く。

 いろんな意味で裏表ない人だけど、こと海戦の指揮になると抜群の冴えを見せる。


「ご当主就任おめでとうございます」

 頭をさげてるのはドノバン。身長は僕と同じくらい。中肉中背のなんてことない体格に、容姿もごくごく普通の男性だ。

「ドノバン、ありがとう」

 この顔で、と言っては失礼だが、情報の扱いに長けているので、その当たりを任せてる。

 

 ちなみにコウベとは、もともと漁村だったところ、貿易港にしたため、改名した。

 その時、前世の僕が知ってる有名な港町の名前を拝借させていただいた。

 

 ドカドカと足音たてて、扉が開くとドワーフとエルフと獣人が入ってきた。

「なんじゃなんじゃ。突然呼び出しおってからに」

「全くです。コッチだって用事というものがあるんですから」

「まぁ、坊主がなんか話したいことあるんだろ。聞いてやろうじゃないか」

 ドワーフは男性はゴードンという。この領の北西に位置してるドワーフの国で長をしている。

 エルフは女性でエルフィーという。この領の西に位置しているエルフの国で長をしている。

 獣人はギドという。この領の北に位置している獣人の国で長をしている。じつはとある魔道具を使って人に化けていた。

 ちなみにさっきまで『ヘラクレス』と名乗ってた。


「あと、だれが来るんじゃい」 

 ゴードンが酒をもってこいというような口調でいう。

「あとはデモンズとアリス様です」

「そうか、アリスとは例の方ですかな」

「そうです。これからこの領に関わるとっても大事なお話なので、皆さんに集まっていただいてます」

「わしらにも関係あるのか?」

「はい」


 きっぱりと言い切った僕の顔を、5人の視線が突き刺した。


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ブックマークしてくださった方、ありがとうございます。なんとか書き上げるよう頑張ります。

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