第6話 スキル
アリス嬢がひとしきりサンドバック(?)をぶったたいた後、それでも気がすまなかったのか、
「公爵さま。これらの人形はどうしますか?」
と、僕に聞いてきた。なので
「どうぞ」
というと、それで納得したのか、ヘラクレスから剣を借りると徹底的に切り刻んだ。
王都を出発したころとは違い、『素晴らしい笑顔』になってくれた。これなら自殺するようなことはないだろうし、暴走することもないと思う。
その後は領主宅で夕食をとる。
『公爵家の当主と令嬢と一緒の食事をとった』という肩書は下級の貴族からは、というよりすべての貴族から喉から手が出るほど欲しいものらしい。そのため最高級の歓待を受けることになった。
辞退するわけもいかないので、なんとか歓待をうけるが、どうやってもぎこちなくなってしまう。
「そうですね」
とか
「すばらしいですね」
とか言ってなんとかしのぎ切った。ような気がした。
デモンズが渋い顔をしてたのは気にしない。
夕食が済んだあと、談話室に集まってもらった。
集まったのは、自分、デモンズ、アリス嬢、アリス嬢の執事の5名だ。
12畳くらいの会議室。
「集まってもらいました。ご当主からお話があるそうなので集まってもらいました」
デモンズが口火を切り、僕にふる。
「ミツハ公爵家の当主になりました。ロイス・ミツハです」
一礼する。
「前置きは抜きで、今から話すことは他言無用でお願いします」
沈黙
「まず、僕には前世、、と言ってはいいのかわからないですが、別の世界の記憶がありますが、その話は今は割愛します」
アリス嬢がなにか言いたげなのを右手で制する。
「次に、僕のスキルは『用意周到』です。このスキルは何かの出来事に対して周到に準備するということみたいです。検証しようが無いのでなんとも言えませんが」
一呼吸
「そして、スキルのおかげで先ほどの人形が用意できました。そして、これから起こりそうな事がある程度予想できるといのもあります。例えば飢饉が来そうなら食料の買い込みとか、作付けの変更とか。水害が起こるのなら堤防の工事をするとかね。外れることもありますが当たることの方が多いいです」
このあたりの話はデモンズたちはすでに知っている。主にアリス嬢たちに聞かせるものだ。
「発言の許可を頂けますか?」
アリス嬢の執事が発言の許可を求める。
黒髪で僕の頭一つ分は長身で、痩せてはいるがガリガリではない。名前はスティーブンと名乗った。そんでもってイケメンだ。
発言を促すと完璧な礼をしてから話し始める。
「公爵様は、この状況を予測されていたのですか?」
−されていたのでしたら、なぜお嬢様をお助けになってくださらないのですか?−
目がそう語っていたが、それには無視して、質問のみに答える。
「残念ながら僕のスキルは未来を予測するものではありません。仮に『食料が足りなくなりそうだから備蓄しよう』と思っても、その原因まではわかりません。天候不順なのか、長雨なのか、戦争がおこるからなのか。ただし、ものによっては用意されたものを見ればわかることもあります。その話はわが領についてからお話いたします。不用意に口に出していいものではないので」
一回話を切る。そしてアリス嬢に向いてお話する。
「アリス様には、わが領についた時に決断をしていただくことになります」
「アイギスにですか?」
アリス嬢が首をかしげる。
アイギスとはうちの領と王国の他の領に唯一つながっている街だ。
「このまま出家する。出奔する。領に残る。色々とあると思いますが、決めていただきたい。どのようなできる限りサポートはいたします。ただし復讐するというのであれば我々は辞退させていただきます」
アリス嬢が僕の目をまっすぐ見据えた。
僕はそれに応えるようにまっすぐ見返した。
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小説書くのって難しいですね
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