第10話 バズる
夜、部屋でくつろいでいると、菫が俺の部屋に慌ただしくやってきた。
「大変よ。見て! 見て!」
菫はスマホ画面を俺に向ける。
「なんだよ」
ベッドで寝転んびつつ漫画を読んでいた俺は起き上がって菫が差し向けるスマホ画面を見る。
「……ん!?」
そこにはodaの『破壊掌』に関する書き込みがあった。
odaは人気アーティストゆえSNSなどに取り上げられるのは問題はない。だが、問題はその内容だ。
『odaにそっくりな歌唱力を持つJK発見!』
『カラオケにoda降臨か!?』
あのカラオケについての書き込みが連なっていたのだ。
さらには盗撮したのか動画映像がアップされていた。
宮沢やその場に俺達の顔は映ってないが、歌声はばっちりと録音されていた。
『本人が来たのかと思った!』
『この後、アシスト要請されたらしいぞ』
『すげえな』
『どこのカラオケだよ』
『ペーメンの音切コロンみたいだな』
などとたくさんのコメントが連なっている。
「すごいな」
そして俺は自分のスマホのSNSアプリでも調べてみた。
「ん!?」
「どうしたの?」
「これって有村のアカウントか?」
今度は俺が自分のスマホ画面を菫に見せる。
検索結果のトップに注目されているアカウントが表示されているのだが、その中で有村らしきアカウントがあったのだ。
『クラスの子がodaの破壊掌でアシスト要請された! しかもカラオケ、アーティスト点が共に99点! まじやばくない!?』
その書き込みに証拠となる画像まで添付されていた。
「これはムッチンのアカウントだね。……すごい。リポスト千超え、いいねは万超えじゃん」
◯
俺は宮沢に連絡してネットで話題になってることを教えたのだが、それは向こうも知っていたようで、
『いやあ、まさかこんなことになるなんて』
「テレビ局の出演依頼とかあったらしいけど?」
有村のアカウントにテレビ局の者と名乗る人からリポストが来たのだ。一般カラオケ大会に出場しないかと。他にもモノマネ・カラオケ大会とか。
それで有村はまずは宮沢にその件を話し、それから返事をすると返した。
俺は有村が宮沢の連絡先を相手に教えず、きちんとした対応をしたことに驚いた。
『全部断るように有村にお願いした』
「断るのか? テレビ出演してだぞ。それに上手くいけば歌手デビューも夢ではないぞ?」
『ううん。そういうのは充分だよ』
「充分?」
『あっ! えっとね、つまり、所詮はマネだし。自分って感じではないからね。そりゃあ有名になるのは嬉しいけど……やっぱりね』
「そっか。まあ、どうするかはお前次第だしな」
『それはさておき、今度ガンハイでコラボイベントあるんだけど手伝ってくれない?』
ガンハイとはFPSゲーム『ガンナーズ・ハイ』のこと。
「いいけど。俺は上手くないのぞ?」
イベントは基本的にポイントを多く手に入れるもの。そのポイントを多く手に入れるには相手を倒さないといけない。
俺もガンハイを多少は嗜むといっても中級クラス。上手くもなければ下手でもないレベル。
『大丈夫。コラボだから』
「コラボ。どこと?」
『ソマリア』
「ソマリアって、ファンシーキャラを作ってる? あのソマリア?」
『そう。それ』
ソマリアは2頭身のファンシーな動物キャラクターを作ってるブランド。ターゲット層は子供であるが40年以上前からあるので大人にも人気がある。
「ソマリアとFPSって合わなくね? ガンハイは殺伐としているんだけど。人を撃ち殺すゲームなんだぞ?」
『コラボといってもそのキャラが出てくるわけでなく、コラボアイテムが登場するってだけ』
「で、そのコラボアイテムが欲しいと」
『そうそう。でもさ、このコラボイベントがご新規さん向けなのよ』
ご新規向けということは比較的難しくないイベントということで、コラボアイテムも難なく手に入るはず。
しかし、それは──。
「つまり、中級者以上にとってはコラボアイテムは不要の産物なんだな?」
『そうなのよー。だから周りもコラボは不参加ばっかなの』
「白石もか?」
『うん。あいつも今回はスルーだって』
「そっか。けどお前ならソロでもいけるんじゃねえの?」
宮沢はガンハイ上級者だ。ご新規向けのイベントならソロでも難しくはないはず。
『それがね。このコラボイベント、ハント型のチーム協力必須のイベントなの』
ハントというのは対人ではなく、モンスターを狩るということ。そしてチーム協力は文字通り、4人1組のチームを組まないといけない。
「マッチングで適当に誰かと組むってのは駄目なのか?」
『それもありだけど。ご新規さんばっかだと面倒だし、ランク指定すると集まらなかったりするんだよねー』
「ふうん、そうか。いいよ。手伝ってやるよ」
『おっ、まじ、助かるー。イベントは8月1日から開催だから』
「分かったよ」
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