第11話 振り返りクイズ配信①

 今日はペイベックスの撮影スタジオにて1周年記念振り返りクイズの配信が行われるので、俺達ペイベックス男性Vtuber2期生の全員が集められた。


「えー、今回は激しい動きはないのでこちらのセンサー付きバンドを装着して、スタジオに入ってください」


 モーションキャプチャスタジオに入る前に俺達はスタッフからセンサー付きバンドを渡させれた。

 いつもはセンサー付き全身タイツのトラッキングスーツで撮影だが、今回は大きな動作がないためバンドだけとなった。


 更衣室でロッカーに貴重品を入れて、センサー付きバンドを装着する。

 そしてモーションキャプチャスタジオに入ると撮影エリアに机と椅子が四つ用意され、撮影左側に司会者用の教卓があった。


「誰が司会するんや?」


 ニグが誰ともなしに聞いた。


「ロメオ先輩が司会するって言ってただろ」


 カガリが答えた。そしてカメラの前で両腕を広げるTポーズをする。しばらくしてからスタッフに「OKです」と言われるとTポーズを解いて指定された席に座った。


 その後、ニグ、ハルヒ、そして俺の順でTポーズをして、席に座る。


 しばらくして司会役のロメオ先輩がスタジオ入りした。


「おはよう。今日はよろしくね」

『よろしくお願いします』


 そして時間がきて収録が始まった。


  ◯


 ロメオ:「どうも皆さん、ペイベックス男性Vtuber1期生の小室ロメオです。今日は2期生1周年記念振り返りクイズの司会を務めさていただきまーす。それでは皆さん、自己紹介どうぞー」


 カガリ:「えー、2期生の犬葡萄カガリです。クイズが1周年振り返りとなっていてドキドキしております。PONはないよね?」


 ニグ:「筑前ニグレドです。初期の自分を見るんはちょっときつい。うぅ、ここから逃げ出したい」


 ロメオ:「ニグは今と初期は全然違うからねー。逃げるなよー」


 ハルヒ:「どうも来栖くるすハルヒでーす。俺はこれといってないよね?」


 ロメオ:「さあ? どうでしょうね? では、お次どうぞ」


 ゼン:「どうもー! 虎王子ゼンだよ! この一年は色々あったからねー。運営にクイズでいじられそうで怖ーい」


 ロメオ:「それでは1周年振り返りクイズ始まるよー」


 2期生全員:『おー!』


 ロメオ:「では最初の問題でーす」


 BGMが鳴り、ロメオが「では、まずこちらの映像をご覧下さい」と言う。


 俺達の前方にスクリーンがあり、そこには作られたカラフルな背景と3Dのクイズ番組でよく見られる箱机、そしてガワを着た俺達が映っていたが、ロメオの発言後、過去の配信映像を使ったクイズ映像が流れる。


 その映像はカガリのホラゲー実況だった。

 ゲームタイトルは『最恐口裂け女2020』。


 ちょうど口裂け女に追われて、逃げている時の映像だ。カガリの絶叫ぶりがえている。


 ロメオ:「では、この後に一体どのようなことが起こるのでしょうか? お手元のペンを使って答えを書いてください」


 机にタブレットとペンタブがあり、そこに答えを記入。

 リスナーからは答えは箱机に表示されるようになっている。


 カガリ:「いきなり俺から!」


 ロメオ:「ちなみに本人は当たって当然ですのでポイントは半分となっております」


 カガリ:「ええ!? でも、半年以上前だったはず」


 ニグ:「半年前って、冬やん。なんでそんな時期にホラゲーなんかするんや?」


 カガリ:「ホラゲーに季節なんて関係ない!」


 ハルヒ:「なんかあったのは覚えてるんだけど。なんだっけ?」


 俺達は過去を思い出したり、推測で答えを捻り出したりして、タブレットに各々答えを記入する。


 ロメオ:「では、答えをオープン」


 前方スクリーンでは箱机に答えが一斉表示される。


 ニグ:「ああ! そうだ! それだった!」


 ニグが皆の答えを見て、悔しそうな声を出している。


 ロメオ:「カガリは『先回りされ、殺されている自分を見る』とあるけど、どういうこと?」


 カガリ:「確かバグが発生して、逃げ切ったと思ってアパートに帰ってきたら、アパート前で口裂け女が俺が操るキャラを殺していた」


 ロメオ:「あれ? それじゃあ、それを見ているカガリは一体?」


 カガリ:「たぶんバグなんでしょうね」


 ロメオ:「ニグは叫んでたけど。なになに、『逆に倒した』。ほう。それが答えか」


 ニグ:「ちゃいます。思い出しました。ああ! 悔しい!」


 ロメオ:「ハハッ。では、ハルヒとゼンは同じ『幽体離脱』だね」


 ハルヒ:「なんか切り抜きもされてなかった?」


 ゼン:「そうそう。それで幽体離脱って話題になったよね」


 ロメオ:「では答えの映像をどうぞ」


 前方スクリーンでゲーム実況映像が流れる。

 映像では、なんとか口裂け女から逃げ切ったカガリ。しかし、アパート前に辿り着くとなぜか口裂け女が先回りしていて、さらにカガリが操るキャラに馬乗りになり、包丁で滅多刺ししていた。


『なんで? どういうこと? どうしてここに? てか、殺されてるの俺じゃん? なんで? この俺は何? 何者?』


 そして画面が暗くなり、赤塗りでバッドエンドの文字が現れる。


『ええ!?』


 ロメオ:「正解はバグが発生して、口裂け女が先回りしていて、プレイヤーを滅多刺し。そしてそれを見て驚愕する幽体離脱したカガリでした。カガリ、ハルヒ、ゼンの3名は大正解!」


 カガリ、ハルヒ、ゼン:『イェーイ!』

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