第7話 お昼時
映画の後、時刻は昼の13時で俺達は遅めの昼食を取ることにするつもりだった──のだが。
ファーストフード店が並ぶフードエリアで何か食べようと考えたが、混雑していて席がなかった。
「うえっ、多すぎ。どうする?」
宮沢が人混みを見て、げんなりしつつ俺に聞く。
「一旦外出るか?」
「面倒だしな。あと1時間くらいしたら空きそうだし、どっかぶらつかない?」
「いいぜ。本屋でも寄るか?」
「うん。そうしよう」
そうして俺達は本屋で暇つぶしをすることにした。
◯
「うっちーはどんな本が好き?」
本屋について宮沢は聞いてきた。
「知ってるだろ」
学校で散々オタ話してるんだ。今更な質問だ。
「少年漫画だっけ? あとライトノベル?」
「そうそう。で、お前はTLだっけ?」
「違うよ。うっちーと同じ少年漫画とラノベだよ。あっ、でも大学生が主人公の少女漫画とかも読むよ。他にも色々読むよ」
「そうなのか? お前とは少年漫画の話しかしてないけど」
「そりゃあ、うっちーは興味のない漫画の話とか嫌でしょ?」
「まあ、それもそうだな」
「そういうこと。少年漫画の話をするグループと少女漫画を話すグループとかあるのよ」
へえ。人によって話す内容が違うのか。
ま、こいつも女子だからな。女子グループでは少女漫画とかの話をするんだろう。
まずは俺達は少年漫画のコーナーに向かって、新刊漫画を確認。
「少年漫画って、多いよね」
宮沢が新刊コーナーのコミックスの山を見て言う。
「そうだな。少年漫画には有名な週刊誌があるからな」
「少女漫画にはないよね週刊誌って。なんでないんだろ? やっぱ女性漫画家が少ないからかな?」
「そうか? 最近は少年漫画で女性漫画家の作品が目立つぞ」
「『呪殺の刀』に『鬼殺開戦』だよね。男性漫画家と思ったら女性漫画家だったもんね。初めてそれを知った時はびっくりだったよ」
歩き進めるとBLの棚に辿り着いた。
「うっちーはBL読む?」
「読まねえよ。こういうのは女が読むんだろ?」
「それは偏見だ。男にも腐男子なるものもいるんだよ」
「へえ」
「これとかおすすめだよ」
宮沢が『東京初恋物語』というタイトルのコミックスを棚から抜き取り、俺に勧める。
表紙絵が恥じらう可愛らしい男の子と、その男の子の顎に手を添えているイケメン男。
「結構」
「う〜ん。ならこれは? ストーリーがいいよ」
次は裸の少年と裸のインテリ系眼鏡男子の表紙絵のBL。タイトルは『ネコと菊』。
「俺を腐男子にするな」
「面白いよー。これとか……これも」
次々にBLを勧めるが、どれも肌色が多い表紙ばかり。
「いい! というかさっきからショタばっかじゃねえか」
「心外。ショタじゃないよ。少年だよ」
「おんなじだろ!」
「違うよ。Vtuberの桜町メテオちゃん曰く、ショタは剥けてなくて、少年は剥けてるけど火星人なんだよ」
「やめろ。下ネタを言うな。人がいるんだぞ」
俺達のいる棚の近くに女性の客数名いる。宮沢の過激発言で何人かがちらりと伺ったぞ。
しかも茶髪に染めたギロッポンで遊んでる系お姉さんが興味深そうにしているような……聞き耳立ててる?
「大丈夫。ここはハード系のBLコーナーだから」
「ハード系なのかよ。それをおすすめしてたのかよ!」
「まずはソフト系行ってみる?」
「いかねえよ。というかBLが好きなのかよ」
「ま、普通くらいかな」
ハード系BLを読む時点で普通ではないような気がするが。
◯
さすがに3時手前になるとフードコーナーも席が空き、俺達は遅めの昼食を取ることにした。
俺はうどん。宮沢は──。
「昼ワックの時間過ぎたのワックにしたのかよ」
宮沢はワックのダブルチーズバーガーセットを買ったのだ。
ワックとは全国チェーン展開しているハンバーガーファストフード店ワクドナルポの略称。
子供から大人まで人気のファーストフード店だが、ここ最近、値上げが増して、今ではクーポンでも買うのを悩むと言われている。
そして昼ワックとは昼の時間帯に売られている割安セットメニューのこと。販売時間は11時30分から14時までの時間。
「株主優待券があったから」
「株持ってんの?」
「親がね。ちょっとだけだよ」
そして俺達は互いに昼食を取り始める。
「ねえ、うっちーてきには今日の『マナカ・マグラ』どう思った?」
「どうとは?」
「ん〜、ここが良かったとか、そういうの?」
つまり感想か。
「そうだな。続きがあるってのは確かだな」
「だよね! それは私も思った。あれで終わったら最悪だよ」
「でも、どう続くんだろうな」
「難しいよね〜」
「続編は何年後になるんだろうな」
「最低でも私達、高校は卒業してそう」
「かもな」
今回の映画化だってアニメ放送から数年かかってるしな。
卒業か。
その頃は大学生かな。
「大学とかは決めてんの?」
「まだ2年だよ。全然先過ぎて見てないよ。うっちーは考えてるの?」
「いいや。近くの良い大学とかに入りたいなー程度」
「私は少し遠くでもいいな。一人暮らしとかしてみたい」
「飯とか洗濯とか大変だぞ」
「なんで分かるの……って、うっちーは親の再婚まで家事とかやってたんだっけ?」
「家事っていっても全然だよ。あの頃は基本出前アプリだったしな」
洗濯も自分と父の分で少なかったしな。
ただ……独りっていうのが寂しかった。
Vtuberをやり始めたのもそんな寂しさを埋めたいという理由も含まれている。
「今は義理のお母さんが?」
「違う。今は菫が料理してくれている」
「嘘っ!? 菫ってギャルでしょ?」
宮沢が驚くのも無理はない。
いかにもギャルって料理下手なイメージがあるからな。
「料理できないって思うだろう。俺も初めはそうだった。けど、意外とあいつ料理出来るんだよ」
「へえー、超意外」
◯
「この後どうする?」
昼食を取り終えて、宮沢が俺に聞く。
「ゲーセンでも寄るか?」
ゼノンモールにはアミューズメントエリアがあり、そこにゲームコーナーがある。筺台のゲームからコインゲーム、そしてクレーンゲームがある。
「いいね。行こう行こう」
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