2章

第1話 配信

「今日で一学期が終了したよ。明日から夏休みだー!」


 夕方の17時に俺はゲーム実況を開始した。そしてまずリスナーに今日は一学期の終業式があり、明日から夏休みと報告した。


『夏休みか』

『夏休み……懐かしい』

『長期休暇ほしい』

『ニートはずっと夏休みだろ?』

『夏休みといえば海?』

『山』

『海!』

『山でキャンプ!』

『海で水着、そしてスイカ割り』


 海派と山派でコメント欄がちょっと荒れる。


『ねー、ゼンはどっち?』

『山でしょ?』

『海だって!』


「海も山もいいけど。それだと配信が出来ないよ? 皆に会えなくなっちゃうよー?」


『致し方ない』

『構わない』


「ちょっとはさみしがれよ!」


『あと夏休みいえば何?』


「夏休みの宿題かな?」


『思い出させるな』

『最後の週は……』

『それもまた青春』

『ねえねえ、通知表もらった?』


「通知表? もらったよ」


『成績は?』

『知りたい』

『アヒルは何羽いるのかな?』


「アヒルって何?」


 アヒルが何の意味か知っているが、ここはあえて知らぬふりで聞く。


『2のこと。これがアヒルに見えるから』

『クワックワッ!』

『ガーガー!』


「へえ。そうなんだ。うちの学校は10段階評価だから2は相当馬鹿でない限りないよ」


『ゼンは再試験組でしょ?』


「ちょっと馬鹿にしないでよ。こう見えて平均で6なんだから」


『6も大概やばいけど』

『5段階で3相当だな』


 ちなみに本当は8。8は高いので少しおつむの悪いゼンは低めに設定して6ということにした。


『成績が高かった科目は?』


「日本史で7だよ」


『日本史は暗記だもんな』

『一夜漬けでいける』

『逆に成績が低かった科目は?』


「低かった科目? ええと、数学かな。4だったよ」


 これは嘘。数学は得意だから本当の成績は8だった。


『4!』

『5段階で2!』

『アヒルだ』


 コメント欄がアヒルや2で埋め尽くされる。


「あーもう! うるさいなー。さあ、今日は『路地裏ファイターズ』をやるよー!」


 このゲームは名前の通り格ゲーである。

 普通の格ゲーとは違い攻撃やガード、投げの他にカウンターがある。

 だからハメ技やコンボを食らってもカウンターが決まれば逆転のチャンスがある。


 しかし、


「カウンターが発生しねえ!」


 そう。カウンターが難しいのだ。相手の攻撃に合わせてカウンターコマンドを入力しないといけない。


 さらに、


「カウンターをカウンターで返すな!」


 カウンター返しというものもあるので。カウンターが出来たからといって喜んではいけない。


「嫌だー、嫌だー、もー、殴るな!」


 俺が操るキャラクターが相手プレイヤーにボコボコにされてKOされた。

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