真夜中の爆発

「んん……何だ……?」


 なんか、爆発音がした様な気が……。

 ふと時計を見ると、時刻は午前二時を回っていた。


「こんな時間にどうしたんだ……?」


 カーテンをピャッと開ける。


「……え?」


 と、闘技場から……煙が……!?


「ど、どうなってる!?」


 すぐに短剣を腰に差し、外に飛び出す。


「何だ今の爆発!?」

「煙が上がってるぞ……!」

「闘技場が……」

「んぁ〜? 何だぁ〜?」

「皆さん! 落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」


 深夜二時だというのに、外に沢山の人がいて、そしてそれを鎮めるために騎士の人達が大声をあげていた。

 まあ突然爆発音が聞こえたらこうもなるか。


「あの、何があったんですか!?」

「誰だお前は――……!? ル、ルイドさん!?」


 やっぱり騎士の間でも有名になってるんだな……。


「お目覚めになられてたんですか!?」

「結構前に……」

「あぁそうでしたか……おっと! 取り敢えずチャンピオンは避難して下さい! ここは危険ですので……!」

「いや、俺も手伝います!」

「ダメです! これは我々の任務です!」


 そう言われても……俺は闘技力祭で優勝出来るくらいには強いんだし、絶対に何か手伝う事は出来るはずだ!

 それに……救助者がいた場合、その人の元へ行く道で自分を鍛えられるかもだし!


「ならば、私が許可する」


 背後から、聞き覚えしかない声が聞こえた。

 そう、今日俺の財布をすっからかんにしてくれた人だ。

 まあ別に恨んだりはしていないけど。


「せ、戦桜せんおう様!」


 え……様付け……?


「ご苦労だな」

「はっ」

「それで、何が起こってる?」

「現在調査中であります」

「そうか……」


 騎士の人に様付けさるなんて……アリスさんは一体何者なんだ……?


「よし、ルイド」

「は、はい?」

「私と一緒に中に行くぞ」

「えぇ!?」


 ア、アリスさんも入ってくれるのか……凄い心強いな。


「良いのですか?」

「ああ、ルイドがいれば、私も心強い」

「戦桜様がそう言うとは……かしこまりました」


 騎士さんが敬礼をしながら闘技場に入る俺らを見送る。


「さて、ではまず私達は今から煙がが上がっている場所の根本を調べて、事件なのか事故なのか調べるとしよう」

「分かりました」

「あと、実は昨日言おうと思ってたんだがな」

「? 何です?」

「その……あんなに奢らせて、悪かった」

「いえ、別に構いませんよ。奢らせてって言ったのは俺ですし、まずあれ助けて貰ったお礼ですし」

「でも、食べすぎた自覚はあるんだ。実際腹八分目どころか腹十一分目くらいまで食ったしな」


 それ吐いちゃってない?


「それで満腹になったなら良いんですよ」

「ルイド……君は心が広いなぁ……そう言って貰えてありがたいよ」

「いえいえ」

「さて!ではそろそろ行こうか!」

「はい!」


 そして俺らはモクモクと上る煙を出している火の近くへと向かった。


「ごほっ、ごほっ……【桜花おうか 桜吹雪】!」


 アリスさんが刀を抜きながらそう唱えると、闘技力祭の時の様に刀身から桜の花弁が散って、周囲に漂っていた煙を払ってくれた。


「おぉ、やっぱりその花弁出すやつは凄いですね……」

「くはは、だろ? 結構頑張って習得したんだ」

「それで……これ、どう見ます?」

「……事件だな」

「そんなすぐに分かるものなんですか?」

「ここを見ろ」


 指差された部分を見てみると、大きな破片が落ちていた。


「これは……?」

「大方、爆弾の破片だろうな」

「ばっ、爆弾!?」

「それも結構威力が強めのやつだな……じゃなきゃここまで大きな破片は飛んで来ない」


 確かに、この爆弾の破片は爆心地と思われる場所からかなり距離がある。

 というか、爆弾はいつ仕掛けられたんだろ?


「爆心地、行ってみるか?」

「行ってみましょう」


 大量の煙を上げている炎の真下に向かう。


「けほ、煙が凄いですね……」

「あまり吸うんじゃないぞ、有害だからな」

「はい……」


 そして花弁で炎を押しのけながら痕跡を見てみる。


「これは……」


 そこには、一つの大きな腕輪が落ちていた。


「腕輪?」

「なんだ……? 見たことも無い代物だな……」


 アリスさんが腕輪を持って色々な角度から見つめる。

 うーん……見た感じではちょっと豪華な普通の腕輪だけどな……。


「ふむ、取り敢えずこれは私が後で騎士団に送っておこう」

「分かりました」

「何か分かったら……あー……ルイドは退院したらどこに泊まる予定なんだ?」

「えっと、多分近くの宿だと思います」

「そうか、ではその宿に伝えに行く」

「分かりました」

「それじゃあ、これからは要救助者を探しに行くぞ!」

「はい!」


 そうして俺らは要救助者のを探す為に走り――出そうとした。


「ん?」


 視線を感じ、背後を振り返る。


「どうした、ルイド?」

「なんか、今視線が……」


 でも、誰もいない……。

 気配を探してみるが、俺とアリスさんしかいない。


「もしかしたら、そっちに要救助者がいるのかもしれない。行ってみよう」

「そうですね!」


 そして今度こそ俺らは走り出し、要救助者を救助し始めた。

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