会議出席

「お疲れ様だな、ルイド」

「ええ、結構疲れましたよ……」


 要救助者を一人残らず救助した俺らは、闘技場の前でそう一息いていた。

 本当に大変だった……何でそんなとこいるの? って人達が物凄い量いた。

 特に闘技場の壁の中にいた人には驚いたなぁ。ほんとどうやって行ったんだろ?


「取り敢えず、私は騎士達に中の状況を教える。君は大人しく病室に戻って休むと良い」

「分かりました。今日はお疲れ様でした」

「ああ、ルイドもお疲れ様」


 そうして俺らは解散し、俺は病室で眠りについた。


「ぶふっ!」


 そして気付けば腹に衝撃が走っていた。


『アォォン!』

『『『『『シャー!』』』』』

「キ、キーちゃんにヒューちゃん達か……どうしたの……?」


 窓から外を見ると朝日が少し高くまで登っていた。

 結構寝ていたっぽいな……。


『アォン、アォォォン!』

『『『『『シャァァァァァァアアアアアアア!』』』』』

「こらこら、静かにしてないとダメだぞー。バレたら俺が怒られちゃうんだから」


 というかなんでそんなに吠えてるんだ……?

 キーちゃん達が吠えている方向を見てみる。


「やあ」

「うわっ!?」


 窓の方に、アリスさんが張り付いていた。


「なっ、何してるんですか!?」

「取り敢えずこれ開けてくれないかい? そろそろ落ちそうなんだ」

「あぁはい!」


 俺はすぐに窓を開け、アリスさんを部屋の中に招き入れた。


「いやぁ助かったよ」

「それで、アリスさんは何してたんですか?」

「これを届けにな」


 そう言ってアリスさんは茶色い封筒を渡して来た。

 軽くて薄いので、中には紙しか入っていないようだ。


「これは?」

「昨日、爆心地に腕輪が落ちてたろ? あれの解析結果だ」

「なるほど……」


 解析結果を読みながらそう返事をする。


「魔道具なのは間違い無いが、市販の物では無いことが分かった。でだ、実はその腕輪には面白い事実があってな……」

「面白い事実?」

「下の方読んでみろ」


 アリスさんに言われた通り下を読む。


「……! 本当ですかこれ!?」

「あぁ、間違いない」


 そこには、『ルシュタール使用』と書かれていた。

 ルシュタールとは、使用した物の限界を突破させられる粉で、その効果が人にも及ぶことから、この世界では麻薬に認定されている。

 つまり、この文字があるという事は、この腕輪は限界を超えて使用される必要があったという事だ。


「一体どんな効果だったんですかね……」

「恐らく、自爆魔法が掛かっていたと推測されている」

「じ、自爆魔法……ですか……」


 自爆魔法は周囲に強力な爆発を起こす魔法だが、反動で自身も死んでしまうといった恐ろしい魔法だ。

 でも……そんな魔法が掛かった魔道具があるなんて……しかもルシュタールまで使用されたやつが……。


「それでな、この結果をウィーラーチ様に知らせたんだ」


 ちゃっかり言ってるけどそれアリスさんも王様と謁見したって事?

 アリスさん……何者なんだ……。


「そしたら今日の十三時から緊急会議をする事になってな。そこで、君にもそこに出席して欲しい」

「……え?」


 今、なんて言った?

 王様が出席する会議に俺も出席?


「そうだ」

「ナチュラルに心を読まないで下さい」

「まあ取り敢えず、後二時間後に王宮に来てくれ。遅れたら……まあ嫌な目には遭うだろうな」


 死刑宣告されてしまった……。


「で、でもなんで俺が」

「君は私と一緒にあの闘技場内を探索し、要救助者を救助したろ? その時の内部状況を私と一緒に教えるのさ」

「……なるほど」


 納得出来てしまった。


「それじゃ、頼むぞ」


 そう言ってアリスさんは窓から飛び降りてしまった。


「……急がないと」


 時計を見れば後残り一時間四十五分しかない。


「まずはエリシアの元に向かわないと……!」


 そうして俺は慌ただしく病室を出たのであった。


 ◾️ ◾️ ◾️


「はぁ……はぁ……なんとかなった……」


 急いでエリシア達が泊まっているであろう宿に向かい、着替えて王宮の前まで走った。

 探すのは少し時間を食ってしまった為、一時間ほど掛かってしまった。

 まあ、それでも残り四十五分あるから全然大丈夫なんだけどね。


「おっ、もう来てたのか」


 後ろからそうアリスさんの声が聞こえた。


「アリスさんも随分早いじゃないですか」

「くはは、確かにな。でもまあ私はそういう性分だからなー。遅刻しないに越した事はないし」

「まあ確かにそうですけどね……」


 そう話しながら俺らは門番さんに挨拶して中に入る。


「こっちだ」


 アリスさんにそう言われついていくと、大きな円卓がある部屋に着いた。

 そして何人かの豪華な服を着た人達が、座りながらこちらをギロリと見つめて来ていた。


「アリス・ローヴェルチ様、ルイド・アッカーサー様ですね?」


 近くにいた執事さんの様な人が俺らにそう聞いて来た。


「その通りだ」

「どうぞ、こちらの席へ」


 執事さんに席に座らして貰い、俺らは少し重苦しい空気の中ウィーラーチ様を待った。

 そして約束通りの時間になり……


「すまない、待たせたな」


 奥からウィーラーチ様が現れた。


「早速だが、本日午前二時に起きた、闘技場の詳細を再度説明してくれるか? 〝現聖騎士副団長〟アリス・ローヴェルチよ」

「!?」


 ア、アリスさんが……聖騎士の副団長!?

 だ、だから皆んな様付けだったのか……!


「はい、本日午前二時、闘技場の中央により爆発が発生。死者は0名、負傷者は十五名、軽傷者は10名、全員夜間の警備をしている者達でした。爆発の原因はルシュタールが使用されている自爆魔法が付与された腕輪と見られており、周囲には誘爆させる為に設置されていたのであろう爆弾の破片が散らばっていました。そして肝心の犯人ですが……未だ目星は付いておりません」

「……なるほど。大方の状態は把握した。そして……其方そなたもアリスと共に闘技場内に入って調べたそうだな?」


 そう言ってウィーラーチ様は俺に顔を向けた。

 うぉぉ!? 俺!?


「はっはい」

「彼女を負かした者だからこそ問おう。闘技場にて何か気付いた事はあったか?」


 ……まあ強いて言えば少し視線を感じたくらいだったが……そんなの要救助者からの視線に決まってるし、そう考えると何も気付いた事はなかった……かな?


「いえ、ございません」

「ふむ、そうか……ともかく、犯人を捕まえねばならないな……よし、ヴルーケよ」

「はっ」


 ヴルーケと呼ばれた男の人がそう返事する。


のちに今回の事件の対策本部を設置する。そこで彼らと共に調査せよ」

「かしこまりした」

「アリス」

「はっ」

「絶対に犯人を見つけるのだ」

「承知いたしました」

「ルイドよ」

「はっ、はいっ!」


 マズイ……俺も「はっ」て言った方が良かったか……?


「アリス達に協力し、爆破犯を探してくれ」

「はっ」


 よし、ちゃんと言えたぞー。

 それを聞いた王様は会議を他の方の意見などを聞き、そして無事会議は終了となった。


「昨日よりも疲れたな……」

「くはは、これからもっと疲れるぞ」

「うあー……というかアリスさん、聖騎士の副団長だったんですね」

「まあな」

「なんで言わなかったんです?」

「聞かれなかったし、それに言ったら萎縮いしゅくしてしまうと思って」


 確かに、聖騎士の副団長だと知っていたら俺は萎縮してしまっていただろう。

 だってめちゃくちゃ凄い人だもん。聖騎士の副団長って。


「それじゃ、ひとまずは私達は帰って休むとしようか」

「えっ、帰っちゃって良いもんなんですか?」

「どうせ対策本部が設立されるのは明日だろうからな。それまでにしっかり体を休めておかないと」

「なるほど……では、また明日」

「ああ、また明日な」


 そうして俺は、エリシア達が泊まっている宿へと帰るのであった。

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