話し合い
「あ、ありがとうございましたー……」
空になった財布を
あぁ、何でだろ、このレストランに入る前はそこそこ重かった財布が軽いなぁ……。
「ご馳走になった」
「いえいえ、お礼がしたいって言ったのは俺ですし」
「しかしだな……流石に食べ過ぎた自覚はあるんだ。現に君の財布は空になった訳だし……」
「うっ」
バレない様に出したつもりだったんだけどな……。
「いやいや、誰でも財布をひっくり返して中身全部ぶちまけたら誰だって空になったって分かるだろ」
なっ、俺の心を読まれた……!?
アリスさん……エスパーの力まであったのか……。
「ある訳ないだろ」
「いや絶対あるじゃないですか」
そんな会話をしながら、俺らは大通りまで歩いて行った。
沢山の人で賑わっていて、下手したらアリスさんと迷子になってしまうレベルで人がぎゅうぎゅう詰めだった。大通りなのに。
「アリスさん……大丈夫ですか……?」
「ああ、それにしても凄い人だな……」
「いつもは、こんな感じじゃないんですか?」
「いつもはもっと人が少ない。まあ、今日は闘技力祭があったし、色々な国から見物に来てるんだろう」
「なるほど……」
確かにそう言われてみれば、ここら辺の国の人じゃない人も混じっている。
「それほど闘技力祭って注目度が高いんですね」
「ルイド……知らずに闘技力祭に参加したのか……?」
「えっと……まあ、はい……」
この国の王様に参加しないかって聞かれたなんて言えないよな……。
「くはは、それなのに私を負かして優勝してしまうとはな……!」
「す、すみません……」
「いやいや、別に嫌味とかじゃないよ。普通凄いと思っただけだ。私は君に負けるまで闘技力祭に参加する者の中では一番強いと思っていたからな……」
「そういえば、
「ほう、知っていたのか」
「さっきマスコミの人達が……」
「なるほど」
「なんでそう呼ばれてるんですか?」
そう聞くと、アリスさんは
「これだ」
「ぼ、冒険者カード……?」
アリスさんも冒険者だったのか。
「ここを見てみろ」
アリスさんが指差した部分を見てみると……
『職業:剣豪』
聞いたこともない職業だった。
「この職業は何ですか?」
「まあ、剣の扱いが非常に上手い剣士、みたいなものだ」
「へぇ……そんなのがあるんですねぇ……」
世界は広いなぁ……。
「で、私はそんな職業だから剣……正確には刀を使ってクエストをクリアしたりしていたら、何故だか戦桜なんて呼ばれる様になってしまっていたんだ」
「ははは……でも凄い事ですよ。二つ名を周りが勝手に言っちゃうって事は、それほどお強いって事何ですから」
「君には負けたがな」
「うっ……」
「くはは、冗談だ」
そう言ってアリスさんは少し歩くスピードを上げた。
「さてと、私はそろそろ宿に戻るとするよ。君はどうす――ああ、病室に戻らないとだったな」
「ですね」
「それじゃ、またいつか会おう」
「はい、またいつか」
そうして俺らは別れ、俺は病室へと戻るのであった。
◾️ ◾️ ◾️
「あっ! ルイド様! 遅いです!」
「ごめんごめん……」
「すぅー、すぅー……」
寝息が聞こえたので見てみると、ラルムがベットで寝ていた。
「あぁ、ラルムは疲れたそうなので寝てしまいました。召喚主様のベットを使って寝るのは本来はダメですが……寝かせてあげてくれませんか?」
「別に大丈夫だよ。俺はすっかり回復したし」
「そうですか……ありがとうございます」
そう言ってエリシアはベットの方を見る。
「羨ましい……」
「え?」
「あぁいえ、何でもありません。それよりどうでしたか? 外出は」
「えっとね、出た瞬間にマスコミに囲まれちゃったんだけど、そこをアリスさんに助けて貰ったんだ」
「アリスさんが……!」
「そ。それでお礼に食事を奢ったら……はは、この通りだよ」
そう言って財布を取り出して逆さにして振る。
「えぇ……!? アリスさんって意外と食べるお方なのですね……!」
「意外だったよ……まあ、あれくらいでお金に困る様な所持金じゃないんだけどね」
「うふふ、ダンジョンで倒して来たモンスターのお金がまだありますものね」
「でも本当に凄い食べっぷりだったよ……がっつがっつむっしゃむっしゃって食べるだけで、四人前のボリーブが消えていくんだ」
「な、何が起こってるんですかそれは……?」
「ん……んんぅ……?」
そう会話していると、寝ていたラルムが起きた。
「あ……ルイド様……」
「起きたのか、ラルム」
「はっ、はい……あっ! ベットを勝手に使ってごめんなさい!」
「いやいいよいいよ、俺の怪我はもう治ったし」
「そ、そう言って貰えるとありがたいです……!」
ラルムがベットから降りて、ベットを手で差す。
「でも、ルイド様はまだ入院中ですので……大事を取ってどうか今は寝ていて下さい」
「まあ、そうだね」
そう言って俺はベットに寝転がる。
「それじゃあ、私達は明日、向かいに参りますので、それまでは安静にしていて下さいね」
「分かった」
二人が部屋から出ていくと、病室の中がシンと静まり返り、シーンと耳鳴りがした。
「……寝よう」
こういう暇で退屈時は寝るに限る。
俺は目を閉じて、睡魔に身を任せた。
――ドゴォォォォォォォン!
そして――夜中に爆発音と共に目が覚めた。
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