紹介と大蛇探し

「えっと……ルイドさん……その方達は……? というか……そのキマイラは何なんですか……?」

「あぁ、ご紹介します。彼女がエリシアで、こっちがラルム。そしてこのキマイラは、キーちゃんと言います。それで、キーちゃんが俺らに懐いているのは……えっと……」


 待てよ!? ここでもし本当の事を言ったらとんでもない事にならないか!?

 だって一応キーちゃんって神話級モンスターだぞ? それをエリシアが召喚獣した何て言ったらパニクる事間違いなしじゃないか!

 な、何て言おう……。


「お、俺らが保護した子なんです……」

『アォン!?』

「ほ、保護……!?」


 うぐっ……流石に苦しかったか……?


「な、なるほど、それならば懐いているのも納得です……」


 ほっ、良かった……分かってくれた……。

 ルドーさん詐欺に遭わないと良いなぁ……。


「で、そちらがエリシ……うわっ!?」


 ルドーさんが目を手で覆い隠す。


「どっ、どうしたんですか!?」

「眩しいものを……直視したから目が……!」


 見ると、ミリスさんもフィールさんもそうしていた。

 確かに……エリシアとラルムめっちゃ美人なもんな……。


「エ、エリシアさん達はお仲間ですか?」


 あっ、そのまま話すんだ。


「そうです」

「なるほど、エリシアさん達にもそのキーちゃんは懐いている様ですねぇー。凄いです」


 これに他の神話級モンスターであるヒュドラであるヒューちゃんも懐いていると言ったらどうな……


「……あれ?」

「? どうかされましたか……? ルイド様?」

「ラルム、ヒューちゃん達はどこだ?」

「あっ……それなんですけれど……実は……は、はぐれてしまいまして……」

「え!?」


 嘘だろ!? あの巨体だぞ!?

 それで逸れるなんてありえるのか!?


「申し訳ありません……! ルイド様を探すのに必死で……!」

「そ、そう言われちゃうとなー……」


 まあ元から怒ったりとかはしてないんだけど。


「取り敢えず、これからヒューちゃん達を探すとしようか」

「ううっ……本当にすみません……」

「私からも申し訳ありません……せめて私がヒューちゃん達を見ていていれば……」

「いやいや、二人共もう謝らないで……!」


 二人が俺に頭を下げているのを見て、いつのまにか手で覆い隠すのをやめていたルドーさん達の目が「えぇ……」みたいな目になっちゃってるから! お願い! 頭上げて!


「かしこまりました」

「わっ、分かりました……!」


 そう言って二人は頭を上げてくれた。

 良かった……。


「えっと……ルドーさん」

「あっ、はい」

「ちょっと俺らはそのヒューちゃんを探します。なのでここら辺で……」

「いや、むしろそのヒューちゃん……達? を俺らも探させて下さい!」


 ……えぇ……。


「で、でも……」

「いいえ、俺達はルイドさんのクエストのお手伝いを一切出来ていません。ならばせめて! そのヒューちゃんという子達の捜索をさせて頂きたいのです!」

「え、えーと、少し話し合わせて貰っても良いですか?」

「構いません!」


 そして俺らはルドーさんから少し離れた場所で話し合い始めた。


「ルイド様、気になっていたのですが、あの方達は何者なのですか?」

「えぇーと……エリシアを探してる途中で出会った別の冒険者達だよ。男の人はルドーさんで、あの金髪の人がミリスさん。それであの黒髪の方がフィールさんだね」

「なるほど、それで、何故あの方達はルイド様を手伝おうとするのですか?」

「何かモンスターを倒したら、助けて貰ったって思われて、俺のクエストの手助けをするって言って来て、断るに断れず今に至る感じ」

「大体分かりました……もう一つ質問よろしいでしょうか?」

「何?」

「ミリスさんとフィールさんに……デレデレしたりとかしてませんよね?」

「しっ、してないしてない!」

「なら良いです。ねぇラルム?」

「そ、そうですね……なら安心です……」


 何でそれを聞いて二人共安心してるんだ?


「それで、ルドーさん達をヒューちゃんの捜索に連れて行くんですか?」

「そこなんだよねぇー。どうしようか?」

「私は反対です。ヒューちゃんの存在を私達以外が知れば、私達が注目の的になってしまいます」

「? 何で注目の的になっちゃダメなんだ?」

「それは、その……ル、ルイド様が他の女性に目移りするかもしれませんしぃ……?」

「た、確かそうですね……! 目移りしちゃうかもしれないなら……私も反対です……!」

「なんで手伝って貰うかの有無が俺が他の女性に目移りするかで決まるんだ……」

「じゃあ、ルイド様は他の女性達に目移りしないって断言出来ますか?」

「出来る」

「「!」」


 だって俺エリシアとラルムほどの美人他に知らないもん。


「ほ、本当に?」

「ああ」

「ほ、本当の本当にですか……?」

「何で二人してそんなに確認をしてくるんだ?」

「「本当ですか!?」」


 うわぁあ圧が凄い。


「本当だって」

「「……なら良いです」」


 仲良いなぁ。


「じゃあ、一緒に探索するって事で良い?」

「ルイド様が決めた事に不満はありません……ですが、ヒューちゃんの存在を他の人に知らせて良いのかが気掛かりではあります」

「だよねぇー……」


 ヒューちゃんを指差して「この子達も、保護した子なんです」なんて言った瞬間ルドーさん達が気絶して倒れてしまうかもしれない。


「そうだ、途中まで付いて来て貰うというのはどうだろう?」

「と言いますと?」

「実は、ルドーさん達ってどうやらヒューちゃんを見て逃げた結果俺と出会ったらしいんだ」

「あっ、つまり一度ヒューちゃんを見てはいるって事ですか」

「でも、ルドーさん達はヒューちゃんをヒューちゃんだと知らない。大蛇のモンスターとしか捉えてない。だから、ヒューちゃんをチラリとでも確認次第、近くにあの大蛇がいる、とでも言って離れてて貰って、俺らはヒューちゃん達と会うってのはどうだ?」

「良い作戦だと思います」

「流石ルイド様ですっ!」

「よし、ところでラルム」

「はっ、はい!」

「ヒューちゃん達って……キーちゃんみたいにちっちゃくなれるの?」

「あぁー……やった事が無いので分かりませんが……多分出来ると思います……何せあの巨体ですので……」

「なら良かった……」


 幸い、大きなポーチはまだある。

 まあ足りなくなったら足りなくなったで普通に小さいのを大きいのに変えるけどね。


「それじゃ、一緒に探す事を伝えに行こうか」

「「はいっ!」」


 そして俺らはルドーさん達に一緒に捜索する事になったと伝えた。


「よぉし! でしたらまずそのヒューちゃん……という子の特徴を教えて下さい!」

「「「!」」」


 ヤ……ヤッベェ……そのまま言ったらダメなのにそこ考えて無かった……。


「えっと……お、俺とルドーさん達が見たあの大蛇に近い感じです……」

「蛇のモンスターなんですか?」

「そうですそうです」

「では、蛇のモンスターを見つけたら報告します!」

「ありがとうございます。では、ちょっと離れる感じで探索しましょう。その方が見つかりやすくなりますので」

「分かりました」


 こうして、俺らはヒューちゃんを探し始めるのであった。


 ◾️ ◾️ ◾️


「……いませんねぇー……」

「……いないですねぇ……」

『アォォン……』

「……」


 ヒューちゃんを探し始めて約30分が経ったが、未だに見つかる気配は無い。

 というのも……


「……」

「? どうかされましたかルイド様?」


 今、俺の腕に、エリシアとラルムが引っ付いているのだ。


「何で俺の腕に引っ付いてるの……?」

「ルイド様がもう迷わないようにです」

「流石にもう迷わないよ」

「そう言われても、心配なものは心配です。ねぇラルム?」

「はっ、はいっ!」


 ほんと仲良いな……。


「でもこれじゃあ早く探せないよ……」

「見つけるのに時間が掛かっても、絶対にヒューちゃんは死なないので大丈夫です!」

「なんでそう思うんだ?」

「では、ルイド様はヒューちゃんが死ぬところを想像出来ますか?」

「……出来ない」

「そういう事です」

「そういう事か」


 結局、俺の腕からエリシアとラルムは離れなかった。


「あ! ルイドさん!」


 ルドーさんがそう俺の名前を呼ぶ。


「どうしました!?」

「あれ!」


 ルドーさんが指差す方向には……


『『『『『シャァァァァァ……!』』』』』


 ヒューちゃん達がいた。


「俺らとルイドさんが見たあのモンスターですよ! 逃げないと!」


 ルドーさんはそう言ってヒューちゃん達から離れて行こうとしたが……


「あっ、あれぇ!? なぁんかあそこにヒューちゃん達がいた気がしたなぁ! よーしそれじゃあ急いで捕まえに行こぉー!」

「そっ、そうですねぇ! 行きましょうかルイド様ぁー!」

「い、行きましょー!」

『ア゛ォォン!』

「え、行くんですか!?」

「はい、あぁルドーさん達はここまでで大丈夫です。ヒューちゃん達を見つける為に付いて来て下さり、ありがとうございました」


 そう言って俺らは頭を下げ、ヒューちゃん達の元へ向かおうとしたが……


「いや、俺らだけ何もしないなんて出来ません! ならば俺らは……あの大蛇のモンスターを引き付けます!」

「「「え」」」


 三人同時に同じ声が出た。


『アォン!?』


 キーちゃんは別の声だった。


「ですからその隙に、そのヒューちゃん達を捕まえて来て下さい!」

「い、いやいや、本当にそんな事しなくて大丈夫ですので……」

「では頑張って下さい!」

「あっ、ちょっ、ルドー!」

「全く……」


 俺の話を聞かず、ルドーさん達はヒューちゃん達に向かって走って行ってしまった。


「……どうする?」

「ど、どうすると言われましても、これは……」

「こ、この状況はぁ……」

『アァォン……』


(((マズイ!)))

(アォォン!)


 間違いなくその時、俺らは同じ事を思ったなぁーと、俺は思うのであった。

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