鉱石採取

「ふんっ! ……おぉう……」

「やっぱり、ちょっとキツイですね……」


 俺らは今クエストでベージャ鉱石という物を採取しなければならないのだが……。


「うん、思ってたより、硬い!」


 しかも俺らには採取道具とかそういう物が無い!

 あぁそういえばギルドから出る時受付嬢さんが少し不思議そうな顔をしてたけど、これか! これの事を不思議がってたのか!


「これは……中々の重労働になりそうですね」

「そうだな……」


 手元にある道具は短剣一本のみ。

 ……これでどう採取しろと?

 いやまあこれで来た俺らも俺らなのだが。


「そうだ、キーちゃんならば採取出来るんじゃないか?」

「確かに! お願いしますキーちゃん!」

『アァォン!』


 キーちゃんがベージャ鉱石に右腕を振りかざす。


「「「……」」」


 ベージャ鉱石は、跡形も無く消え去った。


「ダメ……か……」

「強すぎるようですね……」

「あわわわ……」

『アォ〜ン……』


 キーちゃんがごめんと言っているような鳴き声を出した。


「気にしなくていいよキーちゃん。逆に、キーちゃんの強さがよく分かった」

『アォン……!』


 ありがとうと言っているような鳴き声を出しながら、俺に顔をスリスリとして来た。


「取り敢えず、頑張って俺らで採取するとしよう」

「分かりました!」

「はい!」


 そこから俺らは短剣やそこら辺の石を使ったりなどしてベージャ鉱石を採取した。

 キーちゃんには辺りを警戒してもらって、襲ってこようとするモンスターがいたら倒してもらった。

 そして数時間ほど掘り続けて……


「意外と結構な量が取れたな」

「そうですね」

「ですね」


 俺のポーチにようやく収まり切るかどうか位の量を採取出来た。


「それじゃあ帰ろうか」

「「はい!」」


 そして俺らは冒険者ギルドに帰ろうとした――が


『『『『『ギロロロロロロロロロロロロロロロロ』』』』』

「「「!?」」」


 背後に、大量のトカゲのモンスターがいた。

 体に氷をまとっていて触れたら間違いなく凍傷してしまうだろう。


「キーちゃん!」

『アァォン!』


 キーちゃんが大量のアイストカゲの群れの中に突っこむ。


「俺らも行くぞ!」

「かしこまりました!」

「は、はいぃ!」


 短剣を抜き、俺らもアイストカゲの中へ突っこ――もうとした。

 あれ、そういえば、エリシア達は武器を持ってるんだっけ?

 ダンジョンでは見たことがなかった。

 ので、一度立ち止まって振り返り、エリシアたちを見る。

 すると、懐から杖を取り出していた。


「もしかして、エリシア達は【召喚】以外にも魔法を扱えるのか?」

「はい、私は火属性の魔法が扱えます」

「わ、私は風魔法が扱えますぅ……!」


 凄いなぁ、俺は全然扱えなかった。

 スキルへの適正はあるのだが、魔法への適性はなかった。

 魔法とスキルの違いは何なのかと思うだろうがまだよく分かっていない。


「なら心強い! 頼むぞ!」

「お任せ下さい!」

「ま、任せてくらひゃい……!」


 そう言うとエリシア達はキーちゃんが倒し損ねたアイストカゲを倒し始めた。

 勿論、俺も短剣でアイストカゲを倒した。

 それにしても、数が多い。

 倒しても倒してもどこからか湧いて出て来る。


「エリシア! ラルム!」

「はい!」

「な、何でしょうか!?」

「俺はキーちゃんと一緒に恐らく近くにあるアイストカゲのを叩いてくる! だから、今ここにいる奴らを任せて良いか!?」

「もちろん構いません! ご武運を!」

「い、行ってらっしゃいませ!」


 俺はキーちゃんと顔を見合わせ、キーちゃんに乗っかってアイストカゲが流れている方向の真反対向かった。


「ここか……っ!」


 一つの少し大きめの石の下から、アイストカゲ這い出している。

 どうやら、この下に巣がある様だ。


「キーちゃん頼む!」

『ア゛ォォン!』


 キーちゃんに石破壊して貰うと、大量のアイストカゲが小さな空間にうじゃうじゃと蔓延はびこっていた。

 絵面的にめちゃくちゃ気持ち悪い。


「クソ……どうする……!?」


 俺の短剣じゃ流石にこの量のアイストカゲをさばけない。

 やろうものなら一瞬で氷漬けだ。


『アォン!』

「ん? なにか策があるのかキーちゃん?」

『ア゛ォン!』


 そう吠えたキーちゃんは……


『ゴオォォォォオオオオオ!』


 炎を吐き出した。


「えぇっ!? キーちゃんって炎吐けるの!?」


 そういえば、キマイラは炎を吐けるって聞いたことがある!


「す、凄いなキーちゃんは……」

『ゴオォオォオオォオ!』


 炎を吐きながら鳴いた様だが、よく聞き取れなかった。


『『『『『ギロロロロロロォォォォォォォ!』』』』』


 アイストカゲ達がキーちゃんの炎でどんどんやられていく。

 そして段々と出てくるアイストカゲは減り……遂には出てこなくなった。

 キーちゃんが炎を吐くのをやめて


『アォン!』


 と一声吠えた。


「よしっ!」


 キーちゃんから降りて、少しだけ残っていたアイストカゲの尻尾を回収する。

 売れば多少の金になるからだ。


「それじゃあ急いでエリシア達の元へ戻ろう!」

『ガウ!』


 再度キーちゃんの背中に乗り、エリシア達の所へと向かう。


「【焔球えんきゅう】!」

「【ぼ、暴風龍ぼうふうりゅう!】」


 エリシア達が唱えた魔法により、アイストカゲが凄い勢いで倒されていった。


「これは……」


 俺の出る幕は無さそうだ。

 まあ、俺が出来るのって【召喚】と、基本的な短剣の剣術だけだからな……。

 ……なんか悲しくなってきた。

 主にスペックの違いに。


『ギ、ギロ……』


 最後の一体がやられ、動いているアイストカゲはいなくなった。


「あっ! ルイド様!」


 二人が俺の元へ駆け寄って来る。


「お疲れ。凄かったな今の魔法」

「お褒めいただきありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」


 エリシアの杖からはオレンジ色の綺麗な炎の球が何個も放出され、ラルムのからは何となく輪郭りんかくが分かる龍の様なものが出ていた。

 魔法をよく知らない俺でも分かる。

 凄い魔法だと。


「そういえば、さっきキーちゃんが炎を吐いたんだよ」

「えっ!? そんな事出来たのキーちゃん!?」

『アォーン!』

「え? エリシアも知らなかったのか?」

「はい……あ、恐らく、レベルが上がって出来る様になったのだと思います!」

「あーなるほど! そういう事か!」


 確かに、炎を吐けるならばダンジョンで俺らが人喰い植物達に追われている時にとっくに吐いてるか。


「じゃあ、俺はこいつらの尻尾切っちゃうから少し待ってて」

「かしこまりました」

「分かりました」


 俺はアイストカゲの尻尾を切り、ベージャ鉱石の少しだけ空いたスペースに突っ込めるだけ突っ込んだ。


「よし、それじゃあ帰ろう!」

「「はいっ!」」

『アァォン!』


 そうして俺らは、冒険者ギルドへと帰ったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る