一方その頃……――①

「ふぅ、ここか」


 俺達はルイドを追い出した後、まずお金を稼ごうという事になり、このリーラダンジョンにやって来た。


「意外と長かったなぁ」

「でもヴァルト、それに見合う価値があるんでしょ?」


 ギリダスとユミルが俺にそう聞いてくる。


「ああ、このダンジョンは意外と稼げるって噂のダンジョンなんだ」


 冒険者ギルドで何人もの人がそう話していたから間違いない。


「一日でどのくらい稼げるものなの?」

「まあ……大体一万ベイルとかそこら辺りらしいぞ」

「あら? 意外と少な――」

「一人辺り、な」

「「!?」」


 一日で一人辺り一万ベイルは、俺ら冒険者からするとかなりのお金だ。

 普通のダンジョンとかだと、三人で8000ベイル行くかどうか。

 そう聞くと、この一人辺り一万ベイルがどれほど凄いのか分かるだろう。


「そ、そんなに稼げるもんなのか!?」

「間違いない」

「なら早速行きましょ! 時間が勿体無いわ!」


 ユミルが早歩きでリーラダンジョンに入って行く。


「あっ、おいユミル! 待ってくれ!」


 俺らも急いでユミルを追いかける。

 全く、ユミルは昔からお金に目がないからなぁ。


「相変わらずだな」

「だな」


 俺らは少しだけ笑い合いながら、ユミルに追い付いて肩を掴む。


「おいおいそんなに焦んなって。まだ時間はあるぞ?」

「でも急がないと一万も稼げなくなっちゃうわ!」

「ユミル、忘れたのか? パーティーで一番大事なのは、協調性だそ協調性。ルイドみたいになっちゃダメだ」

「ごっ、ごめんヴァルト……」

「良いんだ」


 ユミルの頭をポンポンと撫でる。


「ルイドを反面教師にするんだ。そうすれば、俺らは最強だ」

「うんっ!」


 よし、これでユミルがどっかに行ったりはしないだろう。


「それで? どうやって一万も稼ぐんだ?」

「何も難しい事は無いよ。四層辺りに、今の貴族の間で大流行しているアクセサリーの素材になるモンスターが沢山くらしいんだ。しかも、そいつらは結構弱いと来た」

「なるほど、そいつらを狩るんだな?」

「その通り」

「じゃあ四層に向かいましょ」

「そうだな」


 俺が先頭を歩き、ユミルが中央、ギリダスが後尾こうびになる様にする。

 ユミルはこのパーティーで唯一回復スキルが使える。

 だから、多少は傷付いてもユミルをモンスターから守らないといけない。

 その傷はすぐに治して貰えるしな。


『ルチチチチチチ』

「! モンスターだ!」


 二層に入ってモンスターと遭遇した。

 この蛇のモンスターの模様……フィールスネークか。


「気を付けろ皆んな! フィールスネークだ!」

「んな事もう、分かってるよ!」


 ギリダスがフィールスネークに対して剣で斬り付ける。


『チチチチチチチチ』


 フィールスネークは上手く体をくねらせてそれを回避した。


「ほっ!」


 だが、逃げた先には俺がいる。


『チシャァァァァ!』


 フィールスネークの頭部に剣を突き立て、倒した。


「やったなヴァルト!」

「ああ、ルイドがいないとここまで楽なのか」


 ゴブリンに邪魔をされない! 最高だ!


『『ルッチシャアァァァァァァァ!』』


「おっ」


 どうやら、あと二体いた様だ。


「ギリダス」

「だから、分かってる!」


 ギリダスが再度フィールスネークを斬り付ける。


『ルチッ!』


 もう一匹のフィールスネークが、ギリダスを襲う。


「【火球】!」

『シャァァァァ!』

「ナイス!」


 ギリダスが焼けて悶え苦しんでいるフィールスネークを今度こそ斬り裂く。


『ルチッ、チッ、チシィィィィィィィィ!』


 最後の一匹になったフィールスネークがそう鳴いた。


「なっ!?」


 すると辺りから大量のフィールスネークが現れた。


「おいおい、ちょっとマズくないかヴァルト?」

「大丈夫だ。今まででもこんな風にモンスターに囲まれたりしても、何とかして来たじゃないか」

「そうよギリダス! 今はもうあのお荷物だっていない訳だし! 前よりもずっとマシよ!」

「……そうだな、おし! なんか行ける気がして来た!」

「その意気だ!」


 背中を合わせて、三人で360度死角が無いようにする。


『シシシシシシシシィィィィ!』


 一匹のフィールスネークがそう鳴くと一斉に他のフィールスネークが迫って来た。


「おらぁ!」


 俺らを噛む為に飛んでくる蛇を、剣で斬る。


 よし、大丈夫だ。

 数が多くとも、俺らにはそれを乗り切った経験がある。


 だから今回も――


『シャァァァァァァアア!』

「!?」


 右腕をフィールスネークに噛まれた。


「うっ!」


 少しひるんでしまったその隙に、俺は沢山のフィールスネークに噛まれた。


「うああぁぁぁぁぁ!」

「ヴァルト! ぐあぁぁっ!」


 俺に駆け寄ろうとしたギリダスが沢山のフィールスネークに襲われた。


「か、【火きゅ――きゃぁ!」


 ユミルも俺らにまとわり付くフィールスネークに集中しすぎて、背後から襲われてしまった。


「くっ……!」


 何が、何が起きている!?

 前までフィールスネーク程度でこんな事には……!


「はっ! まさか……!」


 俺らは……ルイドのゴブリンの邪魔が入る前提で動いてしまっている……!?

 くそ、ルイドめ……! パーティーからいなくなった後も俺らの邪魔をするか!


「くそぉ、くそぉぉぉぉぉ!」


 気合いで立ち上がり、フィールスネークを自身の肉ごと引きちぎる。

 後でユミルに回復して貰えば問題は無い。

 自分のを引きちぎり終えたら、ギリダス達に噛みついているフィールスネークを倒す。

 もう彼らに噛みついているので、倒すのは簡単だ。


「痛かったぁ……」

「何で、フィールスネークごときに……」

「恐らくだが、まだルイドのゴブリンの邪魔が入る前提で俺らは動いてしまっているのだ」

「アイツ……いなくなっても私達のお荷物ね!」

「だな」


 本当に、ルイドをパーティーに入れた事は間違いだった。

 はぁ……過去の俺をぶん殴りたい。


「仕方ない、この癖が直るまで1層目でモンスターを倒すとしよう」

「チッ、仕方ねぇか……」


 そして俺らは一層目へと戻って、モンスターを倒し始めた。


――――――――――――――――――――

 これにて第一章完結になります!

『続きが気になる!』

『ルイド強くなりすぎだろ!』

『ヴァルト達はこれからどうなっちゃうの!?』

 などと思って頂けましたら、どうかフォローや★をお願いいたします!

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