帰還
「うおっ……しゃぁぁぁぁぁぁ!」
「やっと……やっと地上に出れますね! ルイド様!」
「ああ!」
『ア゛ア゛ア゛ォォォォン!』
ダンジョンを出て、太陽光を全身に浴びる。
何せ体感一ヶ月ぶりの太陽光だ。感動ってレベルじゃない。
「太陽光が……こんな暖かくて気持ちいい光だなんて知らなかったなぁ」
「そうですねぇールイド様ー」
『アァォォン……』
体が勝手に両手を横に出して、全身で太陽光を受け止める様にしていた。
それほど太陽光を浴びるのが気持ちいいのだ。
「さてと……じゃあまずエリシア」
「はい」
「キーちゃんどうする?」
『ガウッ?』
「えっ、私?」と言う様な鳴き声を上げるキーちゃん。
「キーちゃんをどうする、とは?」
「この後街に行こうと思ってるんだけど、流石にキーちゃんを引き連れて行くのは目立ちすぎる。だから、どこかに待機して貰うとか……」
「あっ、ならば……キーちゃん、あれをやって!」
『アオン!』
そう吠えたキーちゃんの体がどんどん小さくなっていく。
「え、え!?」
『アォーン!』
キーちゃんが俺の肩に乗り、小さくなった顔で俺の頰にスリスリする。
「小さくなった……」
「神話級モンスターなどは、体を小さくする事が出来るんです。まあ、出来ない個体もいますけれど」
「凄いなぁキーちゃん」
『アオン!』
これなら街に行っても目立たないだろう。
「それじゃあ、出ようか」
「ええ、行きましょう、ルイド様」
『アァォォォォォォォン!』
キーちゃんがそう吠えるのと同時に、俺らは一緒に足を踏み出して、東のダンジョンから出た。
◾️ ◾️ ◾️
俺らはまず冒険者ギルドへと向かい、ダンジョンで上に上がっている最中にコツコツ集めたモンスターの素材を売る事にした。
因みに、キーちゃんは俺の腰に付けている中でも一番大きいポーチの中にいる。
『アァオン〜……』
気に入って貰えてる様だ。
「すみません」
「はい」
「その、換金をお願いします」
「かしこまりました」
冒険者カードと、キーちゃんが入ってるやつ以外のポーチに入っている魔物の素材をカウンターに置く。
「鑑定いたしますので、しばらくお待ち下さい」
そう言って受付嬢さんは奥へカードと素材を持って行ってしまった。
「おい、あの女の人超綺麗じゃね?」
そんな声が、耳に入ってきた。
「ホントだ。超美人だな」
「チッ、でも男持ちかよ。いなけりゃ、俺が朝まで楽しませてやるのに」
「はっ、お前より俺の方が楽しませられるね」
「「…………」」
何というか、エリシアで下品な会話をしないで欲しい。
実際エリシアも、その男達を見て少しだけ嫌そうな顔をしていた。
あと、キーちゃんはポーチから今にも飛び出して彼らに襲いかかりそうだったので俺が抑えている。
ちょ、噛むな噛むな。
「……ルイド様?」
「あっ、はい!」
いつの間にか、受付嬢さんがカウンター越しに立っていた。
「ルイド様、もう一度おっしゃいますが、冒険者カードに対して不正行為をしないで下さい」
「……え?」
不正行為って……何の事だ?
「ほら、ここですよ、ここ」
そう言って受付嬢さんが俺の冒険者カードの名前から下をグルーッと指でなぞる。
そういや俺も最近見てなかったな……ダンジョン内ではずっと緊迫した空気だったからあのレベルを教えてくれる声も聞こえてなかったし……一体どんな風になっ――
『名前:ルイド・アッカーサー
職業:召喚士
冒険者ランク:D
所属パーティー:無所属
HP:256935/256935
MP:278643/278643
スキル:【召喚(ゴブリン)】消費MP:10【召喚(召喚士)】消費MP:10』
……想像より、とんでもない事になってた。
「こんなあからさまな不正をやる方が未だにいるんですねぇー」
「いやいや、これ本当に――」
「では、こちらに手をかざしてください」
そう言って受付嬢さんが手を向けたのは、レベル測定器だった。
冒険者になる時にこれを使ってレベルを調べて、そこから冒険者カードが出来るのだ。
「かざせば、レベルがすぐ分かりますので」
エリシアの方を見ると、エリシアはこくりと頷いた。
「すぅー、はぁー」
深呼吸をし、手をかざす。
するとレベル測定器に付いている数字が、猛スピードで動き始めた。
「!」
受付嬢さんの顔が驚きの表情に変わる。
チーンという音と共に出された数字は……
「よ……40000……7063……」
ちゃんと、正しい数値を叩き出していた。
「そんな……しょ、召喚士でこんなっ……」
受付嬢さんが後退りする。
それに釣られて他の冒険者達の注目が俺に集まる。
「その……早く換金しちゃってくれないかな?」
「あっ、はい! こちらになります!」
ドン! という音と共に大きな袋が開かれる。
「……え、もしかしてこれが……」
「ルイド様が持って来たモンスターの素材の換金結果になります」
俺は急いで袋を持って中を見てみる。
おぉぉぉぉぉ! 金貨が一枚……二枚……三枚……数え切れないぞ!
「ほっ、本当にこれが!?」
「はい」
「俺の!?」
「はい」
うっひゃぁー!
「あと、これは少し個人的になのですが……」
受付嬢さんの口元に耳を近づける。
「その、出来ればこれからも沢山クエストを受けて頂きたいんです。貴方の様な高レベルの冒険者さんは、やはり中々いなくて……溜まってしまっているクエストなどを消化して頂けると、本当に助かるんです」
冒険者ギルド思いの人だな……。
「分かりました」
俺はそう言って元の姿勢に戻る。
まあいづれこの大金も底を尽きるしな。
そうならない為にも、コツコツ稼がないと。
「今度はクエストを受ける為に来ます」
「ありがとうございます」
「では、また」
そう言って、俺らは冒険者ギルドの外に出た。
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