第六話 悪魔

「ターナ?」

「私達にとって、あなたは悪魔よ!!」

「毎回、毎回、同じ事を、私もウンザリですわ」

「リミー、何を言って・・・」

「俺もお前が嬢ちゃんを連れて来る時は、毎回恐怖だったぜ」

「クククク」


魔王は腕を組み眺めている。


「お前たち・・・俺達は仲間だろ・・」

「あんたは悪魔以外の何があるの?」

「ふざけるな!今まで一緒にやってきただろ!」

「よく言いますね。私たちがどんな思いで貴方と一緒に居たと思ってるのかしら?」

「リミー・・・本気で言っているのか?」

「俺達はお前を仲間と思った事などないぞ」

「バウンド!本気で言ってんのか!」

「ああ、お前は厄災の何者でもない!」

「俺は・・俺は!」

「これで分かった?ニット!あんたは早く死ねばいいのよ!」

「ターナ・・・何でそんな事を・・・」

「貴方は、気味が悪いです」

「ああ、そうだな。話しの途中で違うこと言い始めるしな」

「それは、セーブとロードの・・・」


魔王が言っていた言葉の意味が分かった。

ターナが睨み


「あんたさ、おかしいのよ。頭が!!」


心が砕けそうだ・・涙が溢れそうになる


「スキルを手に入れて数回?繰り返しただけ?私たちが何回同じ事を繰り返したか、あんた分かってないよね?」

「1000回以上繰り返しましたわ。貴方にこの苦痛理解出来ますでしょうか?」

「それは・・しかし・・」

「しかし、何よ!」

「俺は・・記憶に・・」

「だから何?いい加減気づきなさいよね」

「あんたは」「貴方は」「お前は」


3人の声が一つになる。


「仲間じゃない!!!」


あ・・・・

折れた・・・

心が折れたのは自分でもわかった。

俺の心は持たなかった・・・

俺は・・ターナを馬鹿女と・・・

しかし、最高の仲間だった。

いつも、この仲間と旅をするのは楽しかった。

しかし・・・

俺はその場に崩れ落ち手を付いた。涙が自然と零れ落ち、拭っても拭っても溢れ出る。

ターナの声が頭の上から聞こえる。俺は、頭を上げる事など出来なかった。


「あんた、早く魔王になってさあ、私達を解放してくれない?」

「泣いてれば許してくれると思ってるのかしら?早く魔王になって下さらない?」


手が震える。ターナとリミーの今まで聞いた事のない、落ち着いて話している様で言葉の中に怒気を含んだ話し方が心を締め付ける。


「俺は・・ヒック・・・ウグ・・知らなかったんだ・・・ウゥ・・」


俺は上を見上げた。ターナ、リミー、バウンドが、目玉だけ下を見るように俺を見下ろしていた。


「あぁぁ・・・」

「さあ、押して、魔王になりなさい」

「押して頂けますか?」

「小僧押せよ」

「くくくくく」


俺は、何も考えられなかった。信じていた者、大事な者達、そう思っていたのは自分だけだった。それを突き付けられた。膝が笑っている。俺は立ち上がったが、皆の顔を見る勇気は無かった。仲間を失った勇者なんて、こんなモノかも知れない。


「あんた、何やってるの?早く押せ!私達をあんたから解放しろ!」

「私達は、消滅したいと思っています。貴方のせいですわ。早く・・はいを・・押せ!」

「皆、ごめんなさい・・ウゥ・・ごめんなさい!」

「はぁ?今更何言ってるの?」

「何故、許して貰えると思う事が出来るのかしら?」


バウンドが近いてきて俺の肩に手を乗せ一言だけ言う。


「押せ、な?」


皆が一斉に言い出す。


「押せ!押せ!押せ!」


もう、限界だった。一歩、歩く度に涙が下に落ちる。

魔王が笑いを我慢している姿が見える。しかし、皆を見る事が出来ない。水晶の前に立つ、涙を拭いながら水晶に書かれている・・


【はい】


の部分を震える指で押した。


最後まで皆の顔を見る事は出来なかった。


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