第9話
それはさておき、
「しかし、こいつらが犯人でないすると、今回の調査は無駄骨じゃないか」
「無駄に、3組のカップルの夜を台無しにしちゃったね」
やれやれと、綾羅木定祐と上市理可が話す。
その傍では、
「……」
「……」
と、カップルの二人が無言ながらも、「はい。私たちが、その犠牲者です」と言わんかのような顔をしていたが。
「それは、仕方がないことだよ、理可君」
「なぜに、君呼び? そして、ナニカ博士風の話し方」
「物事を為すためにはね、何か、一定の犠牲は仕方がない。そうして、我々人類は、多くの進歩を遂げてきたのだ……。時には、血も涙もない、鬼と言われようが……、犠牲をグッと堪え、やれねばならないこともあるのだ」
「そのようにして、れ、歴史と! 今がある!」
「うん! これは、ゆえに意義のある犠牲だ!」
と、ナニカ謎のテンションで話す二人に、怪人が、
「ど、どっちかというと……、無駄よりの、無駄なほうの犠牲のように見えますけど」
「ああ”! 何か言ったか! ゴラァ!」
「いッ、いえッ! な、何も……!」
と、口をはさんだところ、綾羅木定祐がキレて凄む。
「元はと言えば、だッ! お前たちが逃げるから、こんなとこで盗撮なんかしようとするからだろが! 分かってんのか!?」
「ひ、ひぃっ!」
「す、すんません!」
「すんませんで済んだら警察いるかってんだよ! 考えろって! お前たちも、男のいなりにつっこんでみるか? ああ、コラッ? こちとら、カップルどもが暖かい風呂でエッチするって時によ、二回も男の金〇に頭をつっこんだんだぞ!」
「き、キンタマーニ高原!」
「おだ、まり」
ボケる上市理可に、綾羅木定祐がつっこむ。
そうしながらも、
「しかしのしかし……、そうすると、怪人とは別の可能性を考えないといけないのか?」
「そうね……」
と、綾羅木定祐と上市理可の二人は、ソファに腰を掛けつつ、
「おっ? この韓国のり味、美味しいじゃない」
「うむ……? うん! おいしい!」
と、二人は、当たり前のようにポテチを食いだす。
「――で? お前たちに逆に聞くが、何か、怪人の間で噂になっていることはないのか? 今回の連続爆殺事件に関して」
「ば、爆殺事件に関して、ですかい?」
「い、いや、俺たちの知ってる限りでは、 そんな情報は、ちょっと聞いたことないです」
「ああ、何で聞いてないんだ! コラ!」
「そ、そこ、キレるとこ!?」
理不尽な綾羅木定祐に、怪人が驚愕しながらも、上市理可が、
「じゃあ、さ? 他に、今回の事件の犯行を行えそうな犯人について、ナニカ、思いつくことある?」
「こ、今回の、ナニカ……?」
「ああ……、せっかくだから、君たちも! いっしょに考えよう!」
「え? ぼ、僕たちも?」
「ええ”~? ナニそれ! ナニそれ”~! 逆の逆に面白そうなんですけどぉ”~!」
と、綾羅木定祐がカップルを巻き込んだところ、なぜか相方の女のほうが乗り気になる。
おそらく、テンションがあがると、女装オネェ系の喋り方になるのだろう。
なお、銀髪の男のほうは、「……」と、目が点になっていたが――
そのようにしながらも、話を進めると、
「それでぇ”? まず、屋根裏の、穴から爆殺って、どういうことなんですかぁ”? 何かぁ”、江戸川乱歩の、屋根裏の散歩者みたぁ~い」
「……」
と、綾羅木定祐も、何か微妙にテンションを狂わされつつ、
「う、うむ……。まあ、屋根裏の散歩者のイメージが浮かぶのも無理はない。シン屋根裏の散歩者説も、あるくらいだからな」
「シン屋根裏の散歩者だってぇ”~! ねぇ”ねぇ”! カズヤ君! 面白そう!」
「……お、おぅ」
銀髪のカズヤも、若干困惑しながら相槌する。
「でもぉ~、昔の屋根裏と違って、今の、この天井裏ってぇ”~、狭いですよね~」
「まあ、な。こいつらみたいな怪人や、私らみたいに異能力を使えるなら話は別だが……、それでも、屋根裏の散歩者がやったみたいには、簡単にはいかないだろな」
綾羅木定祐が、そう答える。
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