第8話
***
その後、綾羅木定祐と上市理可の二人は怪人たちの追跡を続け、ついに彼らを追い詰める。
「おしゃァァッ!! テンション上がてきたァァッ!! 暖かいお風呂でエチするんだ! ろ! なァッ!」
ヤケクソモード――、いや、戦闘モードに覚醒した綾羅木定祐が怪人たちを両腕でロックし、
「グ、ワシッ!?」
「ブヘラ!?」
と、怪人たちは奇声をあげる。
そのまま、綾羅木定祐は怪人たちもろとも天井板をすり抜けて下の階の、ベッドの上にドスン――! と、落ちる。
同時に、
「あっ!? あびゃぁぁッ!!」
と、ソファーでポテチを食っていた、ダイナミックな銀髪の若い男が驚愕して叫び、
「えぇ”~!? 何これ”!? 何これ”~!? 意味わかんないんだけどぉ”~!?」
と、男の相方の、整った顔の女が、まるで女装男子のようなハスキーな地の声で驚いて見せる。
「え!? 何!? 今の声!?」
銀髪男がさらに驚くが、それをよそに、綾羅木定祐が怪人たちに迫る。
「おい、てめぇら……」
「「ひぃっ!?」」
びくりと怯える怪人たちに、綾羅木定祐が怒りの形相で、
「てめぇらのせいで、二回も、男のいなりにつっこむことになっただろが……」
「お、俺たちは、し、知らないぜ! そんなこと!」
「い、いなりにつっこんだって、どういうこった!?」
「アレよ、いなりが入ってないじゃなくて、いなりに入ってますやん! ――的な」
「やかましいわい」
と、困惑する怪人たちと、うるさい上市理可と、イライラモードの綾羅木定祐とが喋るのが重なる。
そうしながらも、
「これでも喰らっとけ! てめぇら!」
――シュババッ――!!!
と、綾羅木定祐がいつの間にか、魔界植物の蔓を召還して放っており、
「「げばぁぁッー!!」」
と、怪人たちを拘束した。
「まったく、手間をかけさせやがって――。おい、コラ? お前ら、一体全体、屋根裏、天井裏で何をしようとしていた?」
綾羅木定祐と、
「ねー! ねー! 何しようとしてたんですか! 何しようとしてたんですかー!」
と、うるさく、かつ微妙にウザく上市理可が問いついめる。
「な、何って……、そ、その、特には、」
「そ、そうだぜ! 俺たちゃ、特に何もしようとしてないぜ!」
「何? 何も目的がないのに、こんなラブ・ホの天井裏にいたんですかー? そんなわけないと思うんですが? それは?」
「ほんと、嘘つくなよ、お前たち? 天井裏から、小型の爆弾を下の階の人間の口の中に落とそうとしてたんじゃないのか? カップルを、爆殺するために」
と、微妙にうっとうしい上市理可の横、綾羅木定祐が怒りをぶつけ気味に怪人たちを訊問しようとするも、
「ば、爆殺だって?」
「な、何のこと、だぜ……?」
と、怪人たちは、ポカンとして見せる。
そうしていると、
「ああ”? とぼけるなよ? じゃあ、“そいつ”は何よ?」
と、綾羅木定祐は、彼らが持っていた“ある物”に気がつく。
小型の、電子機器のようなナニカ……
「い、いやぁ……、こ、こいつは、そのぉ……」
ハクビシンの怪人は動揺すると、
「これ? カメラじゃない?」
と、上市理可が確認した。
すると、
「す、すんません!!」
と、ネズミの怪人のほうが、突然に謝ってきた。
「あん? どういうことよ?」
綾羅木定祐が、顔をしかめる。
「す、すんません、……う、嘘ついてました!」
「え? 嘘ついてたんですか! 嘘ついてたんですかー!」
「そ、その……、自分たち、天井裏から、盗撮モノを撮ろうとしていただけなんです……」
「え? 盗撮モノを撮ろうとしてたんですか? 盗撮モノなんか撮ろうとしてたんですか! それは、どういう系統なんですか!」
「おい、ウザいぞ、理可氏」
と、微妙にウザい上市理可を、綾羅木定祐がスルーさせながら、
「そ、それで……、ちょっと、一儲けしようとしていただけですぜ。か、堪忍してくだせえ」
「はぁ、……何だ? すると、お前たちじゃないのかよ! 例の、連続爆殺事件に関与してるのは」
気の抜けた相槌をしながら、綾羅木定祐が聞く。
「だ、だから……、ば、爆殺って、何のことですぜ?」
ハクビシンの怪人が、聞き返す。
確かに、その様子からすると、本当に関与していないように見える。
「いや、さっき言っただろ? 屋根裏、天井裏で、穴から爆弾を、下で寝てる人間の口の中に落とし、爆殺したと思われる手口の連続事件――。知らないか?」
「く、口の中に爆弾を落とし、爆殺……? あ、ああ!」
「た、確かに、SNSで流れてきたな」
と、ここで、怪人たちは思い出した。
数件続いている特異な事件のため、センシティブではあるが、様々な媒体でいちおうニュースにはなっていた。
「ですが、俺たちではないですぜ?」
「そ、それに、その、口の中に、爆弾を落とされたんですよね? 寝ているところに?」
「まあ、いちおう、そういう仮説ね。屋根う――、天井裏から穴を開けて、そこから、ちっちゃい爆弾を落として」
「いやいや! そんな、ピンポイントで爆弾なんて落とせませんよ! 自分たち」
「それに、ここのカップル連中っちゃあ、今からが盛り上がる時ですぜ! そんな、あっちゃこっちゃと、動くのを――、口にピンポイントになんて? どだい無理な話ですぜ!」
「そっかぁ……、今から、プレイだもんね」
上市理可が、言って納得する。
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