シン屋根裏の散歩者

第7話

「ふへへっ……。どうよ？　我が、スベスベの、ローションの力」

　刺青のローションが、ニヤリと笑みを浮かべる。

「ちっ……」

　綾羅木定祐は舌打ちしながらも、まるで、強敵に向かい合う剣豪のように構える。

（これは……、打撃系の攻撃では、難しいか？）

　綾羅木定祐は、考える。

　その間にも、刺青のローションがドスを手に取って、構えをとる。

「今度はこっちの番や！　行っくでぇぇ！」

「むっ！」

　大男がローションを滴らせながら、再び綾羅木定祐に襲いかかる。

　振り上げるドスを、

「うら、ぁっ！」

　と、綾羅木定祐は蹴って弾く。

「くっ！　こんの、ガキャァ！」

　大男が怯みながらも、巨体を活かしたタックルに切り替える。

　先のように、打撃では、このローションにダメージを与えることはできない。

　それを、

「ならばっ！」

　と、綾羅木定祐は合気道のようにして、突進してくるローションをいなす。

「な、何やぁっ!?」

　刺青のローションが驚く。

　綾羅木定祐は、そのまま大男をマットに崩し落とそうとした、そのとき、

　――トゥ、ルンッ――！

「うぉっ!?」

　と、まさかの、綾羅木定祐も足を滑らせてしまう。

　同時に、

「「うぉぉんッ！！」」

　と、両者ともに、重力の力の洗礼を受ける。

　くんずほぐれつのように崩れ落ちるながらも、まず、刺青のローションの尻が洗体マットに落ち、綾羅木定祐の顔面が続く形になる。

　すなわち、

　――モ、ニュッ――！！

　と、綾羅木定祐の頭が――、顔面が、刺青のローションの股間につっこんだのである。

「ぐっ!?　ぐわぁぁ！！」

　重力のかかった、頭という球体をもろに金的に受けてしまい、さすがの大男も叫び声をあげる。

　そのまま、「ギギ、ギッ……」と、大男は気絶し、洗体マットにダウンしてしまう。

　いっぽう、綾羅木定祐のダメージも壮絶であり、

「うわぁぁぁ！！　ま、また男の“いなり”かよ！！」

「やったね。これで本日、第二のいなり男だね」

　と、高みの見物をする上市理可の前、悶絶する。

「ぐっ！　け、汚れる……、汚れるッ！　もう無理！！　もう無理！！　もうほんとにきもいほんとにむり！！」

「あ～あ、女の子になって……。まあ、いいから、とりあえず追いかけるよ、綾羅木氏」

「も、もうヤダ！！」

　半泣きの綾羅木定祐を、上市理可は引っ張る。

「ちょっ！　待ちな！　アンタら！」

　と、刺青のローションの相方の女が呼び止める中、二人はそのまま床をすり抜けて消えていった。