第10話

心身共に極限状態の私に家族、特に母は「どうしたの!?何が不満なの!?」と詰め寄った。

何も食べれない。食べても全部吐く。寝ようとしても思い出して悲鳴を上げる。突然意識を失って倒れる…。それの繰り返し。


そんな私を家族は精神的に追い込んだ。

そして精神的にギリギリだった私はある日感情を爆発させ、母に

「だって知らない男に犯されたんだもん!!」

と泣き叫びながら怒鳴った。

母は一瞬黙り一言

「…その後生理はきた?」

と聞いた。私は泣きながら「この前きた…」と答えた。それを聞いて母は「妊娠しなくて良かった…」と言い、私が何をされたのか根掘り葉掘り詰め寄った。苦痛でしかなかった。

そして、何で知らない男を部屋に入れたのか

何で薬なんか飲んだのか

何でもっと抵抗しなかったのか

挙句には男が一番悪いけど、付け入る隙を作ったアンタも悪い!と私を責めた。そして母は「運が悪かった。もう忘れなさい」と言い


あの夜の事は無かった事にされた。

私は絶望した。目の前が真っ暗になった。

そして私はまた日常生活が送れなくなった。事情を知った家族は私を腫れ物に触るように接した。

そして「誰にも言うな。アンタも悪いんだから忘れなさい」と何度も言い聞かせた。


暫くして日常生活が少しずつ送れるようになった私は今度は家族の言葉が呪いのようになって自分を責め始めた。

私が悪かったのか?隙があったのか?そもそもあれは性暴力になるのか?「避妊しろ!」と言った言葉は同意した事になるのではないか?…だったらあれは何だったのか?


私はずっと悩んだ。でも誰にも相談出来なかった。


数年後、私は解離性同一性障害であると専門医に診断され、今の主治医に定期的に診察をしてもらう事になった。


そんなある時長年誰にも言えなかったあの夜の事を主治医に質問してみようと思い

「レイプの定義ってなんですか?何が同意した事になって何が不同意になるんですか?」

と聞いた。主治医は定義を丁寧に説明してくれ私に

「何か思い当たる事でもあるの?」と尋ねた。

私は暫く黙り込んだ後あの夜の後を全部主治医に話した。


ずっと黙って聞いていた主治医は話終わった私に静かに言った。


「それは完全なレイプだよ」と…。

そして私に非は無い事、フリスクは多分何らかの薬だった事、最悪そのフリスクは違法薬物かもしれない事、私は同意してない事など様々説明された。


そして私は主治医の計らいで性犯罪に遭った方々が受けるカウンセリングをしばらく受ける事になった。


カウンセリングは2〜3年受けた。


それでも今でも克服したとは言えない。不意にフラッシュバックする。

私は主治医の計らいで専門のカウンセリングを受ける事が出来たが、世の中性犯罪に巻き込まれた方々が私のようにカウンセリングを受けれるとは限らない。自分一人で抱え込んでいる方々も多いだろう。


私は性犯罪のニュースを見る度に思う事がある。

ニュースでは犯人は決まって「同意があった」と反論する。それを聞くたびに腹立たしくなる。


その言葉は性犯罪を行った側の都合の良い解釈だ。


抵抗出来なかったようにして性暴力をしたのではないか。私の場合薬により抵抗出来なくされた。諦めの気持ちで「せめて避妊しろ」と叫んだ。でもそれは同意しての言葉ではない。


薬や酒などで意識を奪って前後不確定の状態で何が同意があったと言えるのか?


身近な性犯罪として挙げられる痴漢なども何故か「そんな格好をしていた側も悪い」と言われる。


何故?性犯罪を犯す側が100%悪いのに被害に遭った側が責められるのか?


そもそも被害者を責めるのはおかしい。


確かに若者で露出の多い服を着ている子達も多い。だからと言って性犯罪を犯す理由にも責められる理由にもならない。


性暴力を受けた側がどれくらいの心の傷を負うか、何年も立ち直れない事だってある事を分かっているのか…。


男性にも女性にも考えていただきたい。


性暴力とは何か?性犯罪とは何か?

責める相手を間違えていないか?


私は切に願う。性犯罪に巻き込まれた方々が一人で悩み自分を責める事がないようにと…。


あなたは悪くない






























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