第27話 後の──。
終焉を待つ使者との交戦から一週間が経過した。
俺ら3人は大した怪我もなく、月詠に世話になったのはシンのみだった。
奏華から聞いた話によると、終焉を待つ使者は一人一人がとても強いため、今回のように無事だったことは非常に運が良かったらしい。……それにしては弱かったな。
また、今回の事件をきっかけに、奏華と雛がSSSの内部調査を徹底的に行った。
今回の事件は不可解な部分が多く、特に「待っていた」という発言から内部に敵がいるのではないかと考えられる。
そのため奏華と雛、そして俺もクラーに調べてもらったが、それを以てしても毛一つ見つけることはできなかった。
そして今日、奏華から最早恒例の呼び出しがあった。
「……で、何ですか。総団長?」
少し呆れ気味に尋ねる。もう答えは分かりきってるけど、念の為ね。
俺の不機嫌そうな声音に「まあまあ」と宥めながら、奏華は向かい側のソファに座る。
「お前に聞きたいことがあってな」
「でしょうね……」
俺は当事者なのだから、何かしら聞かれるのは当然だろう。少し遅い気もするけど……。
「で、何を聞きたいんですか?」
俺は茶を啜りながら尋ねる。
「ああ、聞きたいのは二つ。まず一つ目、これの事件についてどう思う?」
やはり聞いてくるか……。
というか月詠にも聞かれた。
だが正直、わからないことが多い。
まず、奴らの言っていた「待っていた」という言葉の意味。
これは俺らがそこへ行くのを分かっていたということで間違いない。
そこから考えられることは──。
「──考えられることは大きく分けて二つあります」
「ほう?言ってみろ」
「一つ。SSSに裏切り者がいること。二つ。確実に『俺』を狙っていたこと」
これには言葉の綾があるかもしれない。細かく言えば、俺の異能力を狙っていたと予想できる。
根拠はある。実のところ、クラーの解析でアイツらに異能力権限がほぼ無いと分かった。
つまりは異能力が使えない。
だったらなぜ使えていたのか。
クラーが出した結論はただ一つ。
『他人の異能力を奪った』ということだ。
そんなことが可能なのかはクラーの存在自体で証明できる。
俺の異能力権限はそもそもクラーにある。異能力とは魂に刻まれる脳内エネルギーだ。
クラーが俺の脳内に魂を移すことによって、俺に異能力権限があるというわけだ。
ならば無論、それを強制的に作用することも可能。
奴らは無理やり脳内に異能力を定着させ、奪ったのだ。
もしSSS内に裏切り者がいるとしたら、俺の異能力を欲しがることは必至だ。
俺は面倒だなあと思いつつ、次は茶菓子を口に運ぶ。
……意外と美味いのが腹立つな。存在を抹消してやろうか。
『異能力の無駄使いはやめてくださいよ』
へいへい。分かってますよーだ。
「そうか……。やはり裏切り者がいると考えるのが妥当か……」
奏華は真剣な面持ちで考えに耽る。
やはり人をまとめる立場だから、そういったことは信じたく無いんだろうなあ……。
俺はパチンと指を鳴らして、俺の手に持っていた茶菓子を奏華の口に無理やり詰め込む。
「む、むぐぐ……!」
「……っぷ」
やべ、顔がリスで笑うのを我慢するので精一杯だわ……。
「ごくっ……!おい!何をするんだ!」
「まあまあ、そんな怒りなさんな」
鬼の形相でこちらを睨んでくる奏華を宥める。
「あんまり考えこんでも分からないものは分かりませんよ?一旦糖分を摂って、それから考えるのも遅くはないでしょう?」
「……それもそうだな」
落ち着いたようで、奏華は再び口に荒々しく茶菓子を入れる。
「……そういえば総団長。もう一つって何ですか?」
確か聞きたいことは二つって……。
奏華はごくんっ!と口内の食物を飲み込むと「ああ」と思い出したように言った。
「聞きたいことというより、言わなきゃいけないことだな」
「言わなきゃいけないこと?」
俺が首を傾げると、奏華は首肯を返す。
「君の隊と雛の隊、そして紅羽には、アメリカに行ってもらう」
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