第26話 夢と炎を描いて
「『フレア・レイン』!」
シンが繰り出したのは炎の雨。
超広範囲の攻撃のため、そう簡単には避けられないのだがー。
「はっ!んな単純な攻撃当たるか!」
ジニエルは超高速で移動して炎の雨を掻い潜った。
さらに、ジニエルは上手くかわしながらアリスに向かって行く。
(この場で一番厄介なのはあの女だ。アイツから潰す)
ジニエルの判断は正しい。
アリスはこの戦場にでの生命線になっている。潰されたらまず詰む。
だからー。
「だから、読みやすいんだよ!ボケナスがああ!」
「なっ!」
アリスの異能力で瞬間移動したシンは、有無を言わせぬ速度で異能力を展開する。
「『ドライブバーン』!」
シンの炎を纏った大剣が、ジニエルに直撃した。
ジニエルはそのまま目測約100m後方へ吹っ飛び、雪を大きく巻き上げながら地面へ衝突した。
巻き上げられた雪でよく見えないが、この程度で倒せているとは到底思っていない。
「アリス!」
「分かってる」
アリスはすかさず編集を発動。
ジニエルの状態をそのままにしてシンの前方10mあたりに瞬間移動させる。
姿が見えた瞬間に、再び異能力を展開。
今度は大剣を地面に突き立てた。
「『グランドバーン』!」
大剣から巻き上げられた炎が一直線にジニエルに向かって行く。
だが、二人は疎かにしていた。敵の状態を。
ジニエルは着弾する直前、その場から姿を消した。
「どこに行って……」
シンが必死に探していると、アリスが上空に向かって筆を向ける。
「それ、禁止ね」
アリスがそう言った刹那、突然、ジニエルが上から降ってきた。
それを見てシンはあまりの光景にポカンと口を開けている。
「アリス……、これは?」
「なんか槍に乗って空飛んでた。だから『削除』した」
アリスの異能力の第二次覚醒『削除』。
対象の行った覚醒技、進化技を1時間禁止する技。ただし、1日に三回まで。
ジニエルは覚醒技にて、槍を浮かせていたのだろう。
良い判断ではあるが、アリスに対してそれは悪手だ。
シンは少し顔を引き攣らせながらも、ジニエルに剣を向ける。
「どないするんや?使徒さん。投降するか?」
「ぐっ……!」
詰まるところ、ジニエルにはもう力が残っていない。
『編集』の強力なサポート能力がそうさせたのだ。
普通ならもう、投降するのが賢明なのだが……。
「俺は……まだ、まだやれる……っ!」
「……っ!?」
ジニエルから黒いオーラが溢れて来る。
それは見るだけでも禍々しく、不快感をたぎらせた。
(これは……あかんやつや!)
「アリスっ!下がれ!」
シンはそう叫びながら異能力を展開。
足に火力を集中させ、炎の応用で空へと飛んだ。
アリスの方を見ると、もう既に戦線を離脱してどこかに隠れている。
ホッと胸を撫で下ろして視線を戻す。
「なんや……、アレ……」
シンの目に映ったのは、先ほど見た人間とは明らかに異なる、脳の形を模した怪物だった。
異能力なのだろうか。いや、違う。どこをどう見ても、未知なる力によるものだ。
バケモノは未だに形状を変化させている。
グシャグシャと周りに余計な肉と血を撒き散らしながら。
(まだあのバケモノは完成しきっとらん。やるなら、今!)
そう判断したシンの行動は速かった。
火力を足から剣に集中させ、超火力を叩き出すべく、超高速で上空からの落下攻撃を仕掛ける。
「『超速斬・バーニング・ドライヴ』!」
シンの攻撃は神速でバケモノに近づいていく。
そして、あと1ミリも満たない距離。
誰もが刈り取ったと思うその瞬間。
バケモノの全身から無数の槍が飛び出した。
その槍はシンを貫こうと襲いかかる。
その瞬間、シンは死を感じ取った。
(あ、死……)
「『
シンが死を覚悟したその瞬間、バケモノの全身から飛び出していた槍は全て折れ、シンの命を貫こうとした刃が無くなった。
彼を助けたのは、黒い髪に片方赤眼、片方が青みがかった黒目の少年。
そう、神崎廉である。
「ほれ、もう一丁!『
廉は巨大な鎌からは想像も出来ないほどの速さで斬撃を繰り出す。
だが、バケモノには傷一つ付いていない。
「硬っ!バカみたいに防御力積むじゃん」
廉は愚痴を溢しながらシンを守るように攻撃を繰り出し続ける。
「廉、もう一人の方はどないした!?」
「ああ!?知らん!なんか急に倒れて、気付いたらコイツがキモい動きしてた!」
つまり、ジニエルがこのバケモノへ変貌した瞬間に廉の相手をしていた敵が急に死んだということか。
シンはその事実から、一つの仮説を立てた。
それは、このバケモノの中で今、二人の魂がぐちゃぐちゃに混ざり合っている状態だということ。
「廉、恐らくコイツは……!」
「ああ、分かってる!ともかく、コイツは俺が相手する!お前は念の為本部に連絡!良いな!?」
「でも、それじゃあ……」
「お前を守りながら戦うなんて大層なことは俺には出来ねえから!早く!」
廉の言葉に押されるようにシンは無言で走り去る。
大分辛辣になってしまったが、これで良いのだと廉は自分に言い聞かせる。
事実、シンは疲弊し切っていた。あのまま共闘しても廉の足手纏いだっただろう。
廉が良心を痛めているところに、隙ありと言いたげにバケモノは槍を繰り出した。
だが、廉は時を止めてそれを避け、仕返しとばかりにバケモノを蹴飛ばした。
だがそれだけでは終わらず、廉は再び時間を停止。
瞬間移動のようにバケモノの吹っ飛ぶ先へ移動し、今度は鎌で野球の球を打つようにバケモノを別方向へ吹っ飛ばす。その行程を一秒間に何万回も繰り返し、最終的にはバケモノを上空へぶっ飛ばした。
上空では無防備になるのは当然。廉はすかさず溜めの姿勢に入る。
「『紅帝神裁・
紅の超巨大光線がバケモノを襲う。
概念を圧縮したそれは、バケモノの存在ごと消し去った。
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