第25話 その炎に心を灯して
翌日、吹雪は止んでスムーズに進むことができ、特殊災害発生地点へ無事に辿り着いていた。着いたのだが……。
「なあ、廉。ここで合ってるんか?」
そこで目にしたのは、ただの雪原。
「座標はここで合ってるはずだけど……」
俺はここに来るまで、ずっとクラーにナビをさせていた。
そのため、間違えるということはまずない。
「まあ念の為、ここらへんを探索してみて……」
俺がそう言って二人の方に目を向けた瞬間、シンがどこかへ消えた。
は?シンは……?どこ行った?
……いや、消えたんじゃない!吹っ飛ばされた!
ふと横の方を見ると、吹っ飛ばされたシンが大剣を杖代わりにして立っている。
どうやら無事のようだ。
一体何が……。
「ちっ……、まだ生きてんのか。しぶとい野郎だ」
「「!?」」
急に目の前に二人の男性現れ、俺とアリスは思わず後退する。
「そうカッカしなさんな、旦那。まだ楽しめるってことだろ?」
「うっせえ戦闘狂。テメエはさっさとあの炎をさっきから撒き散らしてるガキを殺してこい」
「えー!そりゃあねえぜ、旦那!俺だってあの江禅紅羽と同等のアイツとやりてえのに!」
「やりてえならさっさとアイツを始末しろよ……っ!」
「ちぇっ!わーったよっ!」
……っ!しまった!
シンの今の状態で戦うのは少々酷だ。
「アリス!シンの方に向かってくれ!俺は一人で大丈夫だ!」
「分かった!」
アリスはすぐさまシンの元へと走って行く。
念の為、アリスに認識阻害を付与して、襲撃を予防。
この場にいる敵がこの二人だけとは限らないからな。
ほんじゃまあ、パッパと終わらせますか。クラーさん!
「『
悪いが、最初から全開で行かせてもらう!
♢♢♢♢♢♢
一方、シンはというとー
「はあ、はあ……」
不意打ちとはいえど、攻撃を食らったことに怒りを覚えていた。
(全身痛え……!よくもやってくれたわな、ワレぇ……)
絶対後で殺すと内心誓いながら、顔を上げる。
「……で、アンタら何モンや」
シンが見つめている先には、つい先ほどシンを吹っ飛ばした男と話していた肉付きの少ない長身の男性がいた。
「おっと、失礼。俺は『終焉を待つ使者』の一人、ジニエルだ。向こうの神崎廉と戦っているあの人はラゼック。短い間だけど仲良くしてくれると嬉しいな」
「ほおぉう?『終焉を待つ使者』……。つまりは、ここに終始の神にまつわる何かがあるっちゅうことやな」
終焉を待つ使者。
始まりと終わりを司る神である終始の神を信仰する集団である。
彼らの目的はただ一つ。
終始の神をこの世界に顕現させ、終焉をその目で見届けることだ。
「大層なお方が来たモンやな……」
「それはどうも。君たちを待っていた甲斐があるってものだよ」
「……待っていた?」
どういうことだ?
ここに終始の神にまつわるものが眠っているのなら、それを回収してさっさと退却すれば良いものを……。
「シンちゃん!」
ジニエルの後ろから、アリスが走って来る。
恐らくもう一人の方は廉が一人で相手をしているのだろう。
そうだ。細かいことなどどうでもいい。
コイツらを倒してしまえばオールオッケーなのだから。
「アリス!ワイのサポート頼む!」
「分かった!」
アリスは声高々に返事をすると、武器である筆を取り出す。
それを確認したシンは、大剣を構え、一直線に突っ込んでいく。
(バカめ。真っ直ぐにこちらに向かって来るなど、迎撃して下さいと言っているようなものだ)
当然、ジニエルは迎撃するために片手をシンへと向ける。
「『グラトルージェ』!」
刹那、シンは地面から突き出た無数の槍によって全身を穴だらけにされた。
「所詮はこの程度……。さて……」
ジニエルはアリスも始末しようと、アリスの方へと目を向ける。
(こんな少女如き、異能力を使うまでも無い)
そう思いながら拳を振り上げた瞬間、後ろから命の危険を感じ取る。
ジニエルはその直感に従って、しゃがんだ。
案の定、先程無数の槍に貫かれたシンが無傷の状態でジニエルに不意打ちを仕掛けていたのだ。
「……ちっ!」
「はははっ!まだまだ楽しめそうだ!」
ジニエルの笑い声を不快に思いながら、シンの剣の軌道を変え、真横へと繰り出す。
「どこを狙っている!俺はお前の真下にいるぞ!」
ジニエルは反撃とばかりにシンに目掛けて手のひらから槍を顕現させるが、シンはその場から消えて、ジニエルの攻撃は当たらず……。
「『フレア・ソレイヴ』!」
「ぐっ……!」
シンがジニエルの真横に移動しており、シンの攻撃がモロに命中した。
(バカなっ!急に消えるなんて有り得ない!この男の異能力は炎で……!……そうか、あの女の仕業かっ!)
その通り、先ほどの妙なシンの立ち回りはアリスの仕業。
アリスの異能力は『編集』。10秒間前後に起こった物事を自在に書き換えることの出来る異能力。ただし、自分自身には使えない。
ハッキリと言ってしまえば、アリスを潰さない限り、敵の勝利は絶対に有り得ないだろう。
「さあ、こっからや!アリス!」
「うん、シンちゃん」
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