第23話九つの英傑神

 放課後、俺はSSS日本支部に来ていた。


「おお、来た来た。こっちやこっち」

「何でもう既にいるんだよ……」


 お前、学校での仕事はどうした。仕事は。

 明日も授業あるんだからな。


「あ、そういえばどうやったかな、ワイらの授業は」

「イラつくほど分かりやすかった」


 まあ、腐っても教師。

 教えることの専門家なのだから分かりやすくないと困る。

 と、ここでとあることに気付く。


「あれ、そういえばアリスは?」

「ああ、アリスか。あいつは学校で仕事頑張っとるよ」


 こいつ、アリスに仕事を丸投げしたな?

 あとでチクっておこう。


「で、話ってなんだよ」

「お、ちゃんと電気信号受け取ってるみたいで良かったわ。アリスでもまだ解読が出来ひんからなあ」


 すみません、ズルしました。

 クラーっていうスーパーコンピュータ以上の相棒に自動で解読してもらいました。

 ちょっと良心を痛めていると、シンは嬉しそうな表情で口を開く。


「それで、話なんやけどな、お前の武器についてや」

「あの鎌についてか?」


 そう聞くとシンは「せや」と頷く。


「実を言うと、その鎌は本来なら処分対象や」

「は!?」


 何を言い出すのかと思えば、いきなり突拍子のないことを言うじゃねえか。


「一応聞こうか。何でだ」

「落ち着きや。言ったやろ。『本来なら』って」


 少しイラついて少しオーラが漏れてた。

 あぶねえあぶねえ。もう少しで特殊災害を起こすところだったぜ。

 俺はすぐさまオーラを隠して平静を保てるように深呼吸する。


「……落ち着いたか?」


 シンはニコニコしながら尋ねてきた。

 どうやら待っててくれていたようだ。

 俺は小さく頷くと、そっと廊下のベンチに腰掛ける。


「じゃあ話すな。まず、廉は神さまは信じる人か?」

「いないと思ってる。科学的に考えてな」

「せやろな。そんな顔しとるわ」


 いや、どんな顔だよ。失礼だな。

 お前、仮にも俺は上司だからな。


「で、何でそんなことを聞くんだよ」

「急かすな。今話す」


 シンはそう言って俺の隣に腰を掛けた。


「単刀直入に言うと、お前の武器は絶大な力を持ちすぎなんや」

「絶大な力?」


俺の反芻の言葉にシンは「せや」と小さく首肯する。


「『九つの英傑神』、それが原因や」


 その言葉をシンが口にした瞬間、シンからさっきまでの笑顔が消えた。

 何というか、威圧感がある。


「九つの英傑神ってなんだよ」

「それはな……」


シンが口にしたのは、一つのお伽話のような内容だった。


『ーかつて、この世には何もない虚無が無限に広がっていた。

それを変えたのが9人の神々。

全ての光を作り出し、対なる魔を創造した神、序列第9位・『聖魔の神』

全ての熱と冷を司り、生物に温もりを教えた神、序列第8位・『炎氷の神』

全ての生物に心を与え、善と悪を導いた神、序列第7位・『思心の神』

全ての大地と自然を作り出した世界の母なる神、序列第6位・『大緑の神』

全ての魂が還り、生物に治癒を与えた生と死の神、序列第5位・『死生の神』

全ての星々を作り出し、世の均衡を保つ神、序列第4位・『星天の神』

全ての生物の母であり、文明を導いた神、序列第3位・『導人の神』

全ての概念を作り出し、世の地盤を創造せし神、序列第2位・『真偽の神』

全ての始まりであり、終わりでもある、絶対の神、序列第1位・『終始の神』


ーこの9人の神々が全てを作り出し、『九つの英傑神』と呼ばれるようになった。

 もしこの9人が再び集まる時、全てはまた虚無へと還るだろうー』


 シンが話した話はこんな感じ。

 けどこの話と、俺の武器の話の辻褄がまだ合わないんだが。


「話は分かったが、それと俺の武器が処分されるのとどう関係あるんだ?」


 俺がそう聞くと、シンは真面目な面持ちのまま口を開いた。


「真偽の神ってな概念を作り出す時、大鎌を振り回してたらしいねん。で、概念操作と鎌っちゅうのが揃ったから、上は大混乱。世が虚無になるってな」

「上も上で中々大変だな……」


 ごめんなさい。多分これからもっと迷惑かけると思います……。


「けど、まだ確定した訳やないし、鎌を作り出した異能力者なんていなかったからな。扱いに困っとる様子やったぞ」

「それで処分が免れたってことか……」


 よかったー。

 もし処分されてたら、上に暴力という名の直談判を決め込んでたかもしれん。


「今、よくないこと考えとったやろ」

「さ、さあ?ナンノコトカナー?」


 心の中を覗くのはやめていただきたい。


一方その頃ー。


「シンちゃーん!どこ行ったのー!?」


 涙を流しながら残業をしていたアリスなのだった。

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