第31話 休校期間

 ニレイルがこの学校で働き始めて3ヶ月と少しが経過した。ニレイルにとっては忙しくも充実した日々を送ってきたと思っている。そんな中、生徒たちには約2ヶ月の休みが与えられるのだ。

 基本的にこの学校の敷地内は敵が攻めてこない限り安全である上、生活用品など必要なものなら揃えられる。だから学校の寮でそのまま暮らすものや家族に会うために1度帰省するものなどいた。

 帰省の際は転移用のゲートを使えらしい。それは魔族の国に繋がっており、人間に見つかることなく安全に帰省できるとの事。どうやらゲート自体はダークエルフの精霊魔法らしい。


 ダークエルフというのは闇の精霊を操る種族のことを指す。普通のエルフは火、水、地、風の精霊を操る精霊魔法を使うことができるのだが、闇と光の精霊を操ることが出来ない。転移のような精霊魔法は闇の精霊魔法が得意らしく、それを固定してゲートとして用いている。

 多少、魔力を奪われるが大したものでもなく、非常に重宝されていた。


 ただ教師や職員で帰るものは少ない。単純に書類仕事が多く残っている者や、学校に残る生徒の護衛を務めるもの、帰省するような家がない事などが挙げられている。

 ニレイルもその1人だった。ニレイルに関しては書類仕事のようなものもなく、学校が始まるまで本当に暇だった。


 ただ全ての休校期間が暇という訳では無い。4年生以上はダンジョンに潜っての戦闘訓練が頻繁にあるので大丈夫なのだが、これから入る3年生は慎重にならざる負えない。だから1日だけ、3年生のみを集めてダンジョンで訓練を行う機会が休校期間の後半にあったのだ。

 前半はダンジョンに向けての準備期間として用意されており、帰省はダンジョンで訓練し終わってから行く者が大多数だった。

 そんなダンジョン訓練にニレイルもついて行くことになっていた。油断はしていないもののそこまで脅威になりそうな魔物がいるかどうかは既に確認していた。とりあえずやれることと言ったらスキルの拡張に慣れることだろう。


 コンコンコン


 そんなことを考えているとニレイルの部屋をノックする音がした。昼は学校に赴き、レイの特訓をしていたので今の時間は夜、一体誰がドアをノックしたのか気になりつつドアを開けるとそこにはグレイ、クレア、フロルがいた。


「飲み行きましょう!!!!」


 レイスという存在感の薄い種族とは思えぬ明るい声で誘ってきた。


「わかりました!ぜひ参加させていただきます!」


 ニレイルは元気よく反応する。断る理由もない、むしろ誘われることが嬉しい。それは信頼の証でもあるのだから。

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