第30話 3年3組

「あの...ニレイルさん...予定通り......お願い...します......。」


 クレアとニレイルが今日の学校についての打ち合わせをしている。彼女からはダンジョンの危険性などについて教えて欲しいとの事だった。3年になるとダンジョン内に入って訓練を行い始めるらしい。そのためにまずはダンジョンについて知らなければならないということ。

 ただクレアは戦いが得意ではない。だからダンジョンになど入ったことがなく、その危険は想像しかできなかった。

 今年初めて3年生を持つらしくダンジョンは知識しか知らないので入ったことのある人から話を聞きたいとの事だった。


 もちろん他の教員もダンジョン経験者は多い。だが人間との共存と言うサリアの意思に同意する者で教員としての知識、実力を持つものが多くはなかった。それゆえ、この学校は担任制を取っており、全ての授業を担任の先生が行うということだった。だから周りの先生は頼れなく、ニレイルに白羽の矢が立った。


「わかりました。やってみます。」


 ニレイルはある程度話について考えつつ、授業に備えるのだった。


 しばらくして3年3組の授業が始まる。ニレイルは教室に入るとクレアは教室の後ろの方でノートとペンを持ちながらニレイルのことを凝視していた。

 どうやらニレイルの話を参考にしたいらしい。真面目な彼女だからこそ行うことなのだろう。


 そして目に入るのは昨日あった人物、ベリドだった。ベリドもこちらを睨んでいる。だが授業を受ける気はあるらしく、席にきちんと着いていた。


「皆さん、こんにちは。ニレイルです。今日は僕がダンジョンの危険性について話しますね。」


 ニレイルは任務でダンジョンに入ったことがある。殺害対象がダンジョンに潜ることを聞き出し、その中でそのまま殺害した。


「ダンジョンの危険は常識が通じないことでしょう。


 場所によっては極寒の地、灼熱の大地など様々なことがあります。校内にあるダンジョンは森の中なので比較的安全なダンジョンと言えるでしょう。


 ただどのダンジョンでも魔物がいます。油断して足元を掬われるものもいるので気をつけてください。」


 生徒にとっては退屈な話を聞かされてつまらなそうな生徒もたくさんだ。この程度の知識はみんな知っている。反応を見たらニレイルにだってそのことはわかった。

 ニレイルに求められるのはにレイルにしか話せないこと。口では簡単に言えるものの実際行うことは難しい。

 だがこの授業が真面目に聞かれなければ生徒は危ない状態でダンジョンに赴くことになってしまう。現に今だって欠伸をする生徒さえいた。


「と、このように油断していると命を落とすのがダンジョンです。」


 次の瞬間、欠伸をした生徒の後ろに立ち、肩に手を置いたのだ。全員が驚いたようにニレイルの方を向いた。ニレイルはそのまま話を続ける。ただ今度は警告をするように、口調が変わる。


「ダンジョンに求められるのは戦闘能力じゃなくて生存能力だ。学校統一大会のような1回戦って終わりじゃない。


 戦いの持久力、判断力を求められる場合が多い。いいか、勝てないと思った魔物がいたら全力で逃げることだけ考えろ。


 逃げれないと思ったら魔物の猛攻に1日耐えられるような方法を考えておけ。そうすれば助けが来る。


 魔物と戦い勝つことで成長に繋がるが無謀な戦いは無駄に命を落とすだけだ。90%勝てると思った魔物以外は戦うな。その魔物を倒した後に他の魔物が襲ってこないなんて確証はないんだ。」


 全員が息を飲み、ニレイルの話を集中して聞いている。初めて見たにレイルの真剣な顔に恐怖を覚えつつ、ニレイルの言葉を全員が聞いている。そして1人の生徒が手を挙げた。


「もし、勝率の低い相手と戦わざる負えなくなったらどうするんですか?」


 妥当な質問だ。もしかしたら助けを呼ぶために殿を務めるものもこの中にいるかもしれない。ニレイルは少し考えて答える。


「まあそういった魔物に見つからないように動くのが前提だが...。どんな手段でも良い、相手の移動手段を封じろ。足でも、空を飛ぶ魔物だったら翼でも良い。

 勝つんじゃなくて逃げれるようになるために戦え。


 戦いに勝てそうな魔物だったら倒した後に疲れてたら隠れてろ。俺が見つけてやる。」


 生徒たちが安心したような顔をする。そんな中、ただ1人、ベリドだけがにレイルのことを睨みつけていた。

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