問題児②

「すまない、ニレイル。まさかベリドが懲りていないとは...。」


 ベリドを解放してからサリアとベロニカ、ニレイルは学校長室で話をしている。ベリドの感想をニレイルに聞くためだ。もしこれでニレイルがベリドを拒絶したならベリドはニレイルに近づかせないようにしたい。


「…それでベリドは一体どうだった?」


 サリアは恐る恐るニレイルにベリドの印象を聞く。彼女は学校の生徒が好きだ。それこそ問題児であってもそれは変わらない。もしベリドが嫌だと言われたら仕方ないとは思いつつもやはりショックだった。


「うーん。あの子、何か隠していると思いますよ?根は良い子なんじゃないかなぁ。」


 意外な言葉にサリアは目を見開く。突如襲いかかってきたのだ、そして問題児とも聞いている、今いる職員でさえベリドをよく思わないものがいる中でニレイルは良い子と判断したのだ。

 ニレイルはそのまま言葉を続ける。


「鬼族の権能は感情に合わせて力が増すものです。それもあってか鬼族は感情に身を任せて行動することが多い。


 だけどあの子のパンチは弱かった。言動では怒っていると言いつつも権能に現れていない。彼はかなり理性的な生徒だと思いますよ。問題児だと言っても何かしら行動に理由がある気がしますね。」


 初対面で相手のこともよく知らないが、それでも前から聞いていた内容とは大きく異なる気がする。とは言えこれは予想でしかない。だがサリアにとってはベリドを拒絶されなくてほっとしていた。


「それならよかった。確かに彼は入学当初は真面目で理性的な印象を受けていたような気がする...。」


 そうだ、彼は真面目だったのだ。それがどうして...。サリアが考えを巡らしている中、ベロニカが口を開く。


「ニレイル様、私にも違和感があります。先程のベリド様の攻撃もそうですが、挨拶の時のフロル様の精霊魔法の時も、あなたなら避けられましたよね?なぜ避け無かったんですか?」


 彼女は鋭い。まあ女神を撃退した時点である程度の人なら気づいていてもおかしくはなかった。確かにフロルとベリドの攻撃は感じ取っていた。だが彼は避けない。と言うより決めていることがあった。


「他種族の方と戦う時は一撃食らうようにしているんです。死ぬよりはマシだから...」


 ニレイルの瞳から光が消える。他種族からの攻撃を受けることで彼らの感じた痛みを自ら体験しようとしていたのだ。そうするとほんの少しだけ気持ちが楽になるから。サリアもその様子には気づいていた。少し悲しそうにサリアはニレイルに伝える。


「無茶は...するなよ?」

「……善処します。」


 守るためなら無茶だってする。ニレイルには守りたいものが多い。無茶するだけで守れるなら、生きられるのなら喜んで身体を酷使しよう。


 そんな意図を汲み取ってかやはりサリアは悲しそうな顔をする。話が終わりニレイルは退出する。とりあえずはベリドについてもっと知りたいと思った。

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