第3節 赤鬼ベリド

第28話 問題児

 この世界にはダンジョンと呼ばれる世界の歪みが生まれることがある。歪みの中には別の世界が広がっており、各地に存在する魔物はこのダンジョンから溢れ出した生物を指す。

 この学校はそのダンジョンの上に建てられていた。理由は2つ、1つは生徒の訓練のため。魔物との戦いはそれだけ生徒の身になる。

 そしてもう1つは危険人物の収容だ。ダンジョン内に製造した牢屋に問題を起こした生徒、またはこの学校を襲撃してきた敵を収容する目的があった。クロコたちは一時的にこのダンジョンに入れられる予定だった。


 現在、ニレイルはこのダンジョンにサリア、ベロニカと共に来ていた。目的はこの牢屋に収容されているベリドに会うためだ。彼にはまだニレイルのことについて話していない。

 問題を起こされても面倒であるのでこの場で顔合わせをするとの事だった。

 ダンジョン内には森林が広がっていた。ジャングルのような森の中を進んでいくと牢屋と思わしき建物が見えた。そこに2人の男が立っている。おそらく牢屋の管理をしているものなのだろう。2人に挨拶をすると建物の中に入っていく。

 建物の中はシンプルで牢屋しかない。その中に1人、寝ている者がいた。上裸であるためその鍛え抜かれた体がよくわかる。綺麗な筋肉をしており、体も大きい。そして赤い肌と2本の角が特徴だ。おそらく彼が鬼族のベリドという問題児だった。


「やあベリド君、君が明日から学校に復帰ということで会わせたい人がいる。彼は人間のニレイルだ。基本的に学校の清掃や教員の補助を頼んでいる。授業でも人間の参考になるよう参加してもらうこともあるから覚えておいてくれ。」


 牢屋を開けながらサリアがベリドに語りかける。ベリドは退屈そうに話を聞きながらこちらを品定めしていた。そして次の瞬間、ベリドは文字通り鬼の形相で走り出しニレイルの顔面を殴りつけたのだ。

 鬼族は力が強い、ニレイルは吹き飛び、壁に叩きつけられる。


「人間が!!俺に関わるな!!」

「ニレイル大丈夫か!おいベリド!何をやっているんだ!!」


 サリアは慌てたようにニレイルの安否を確認する。ベリドはこちらを睨みつけていた。ベロニカは静かにニレイルの方を見る。

 ニレイルは何事も無かったかのように起き上がるとベリドに問いかける。


「君、今怒っていたの?」

「?見ればわかるだろう!怒ってる、人間なんかと一緒なんて!!」

「ベリド...貴様そろそろ本格的に矯正に入るが」


 ベリドはサリアの地雷を踏み抜いた。様々な人間と仲良くしろとは言わない。だがよく知らない相手を拒絶することはサリアは良しとしないのだ。サリアから圧が漏れ出すが、それを止めたのはニレイルだった。


「サリア様、大丈夫です。ベリド君か...これからよろくしね」


 ニレイルが笑顔で語りかけるがベリドは無視をする。それに対してまたサリアが怒りそうになるがそれをニレイルは止めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る