第26話 竜神族の少女
「覚えておこう、ニレイル。今後貴様と戦う神は本気で殺しにいくからなぁ!!!!」
体を大きく切り裂かれた女神から光が漏れ出す。怒りを込めた言葉を気にもとめない。もし次にまた神が来てもそれはその時に考えよう。とにかく今はレイと話がしたい。
神は血を流さない。もしさらに代償を払っていたのならもっと戦いが長引いていただろう。だがそんなことは言ってられず、女神は霧散して行ったのだった。
「ぐはぁっ!!」
女神が消えてもニレイルは安心できなかった。その場に大量の血を吐き出したのだ。先程作った剣と足袋も消えてしまう。
どうやらあの2つの物体を創造するのは体に大きな負担があるらしい。だがたぶん死にはしないだろう。ただ体には激痛が走っている。なんとか我慢しながらレイの方向に歩いていく。
戦いを見ていたサリアたちは急いでニレイルの方に駆け寄ってくる。
「大丈夫か?」
心配そうな顔をしてサリアが声をかけてくれた。それもそうだ、血を吐き出したんだ。そうでなくても様々な場所から血が流れている。傍から見たら立っているのが不思議なのだろう。
だがまだ倒れない、この状態じゃあレイとちゃんとした話もできないだろう。だから最初に伝えるべき言葉を考える。
歩きながらレイに近づき、そして彼女の肩に手を置いた。
「ごめんな。俺が0番だ。たくさん話したいことはある。だけど...殺すなら殺してくれ。それで俺は恨まない。」
やっと言えた。彼女の選択で彼女が気を負わないように、言い残すことがないように、これだけは言いたかった。
そして伝えたかったことも伝えられ周りの安全もある程度確保できたのだ。ニレイルは安心してしまうとその場に倒れ込むのだった。
目が覚めるとニレイルの視界には天井が見える。体を起こし辺りを見渡した。ここは確かレダクローニ学校の保健室だった。どうやら自分以外にもここを利用している生徒がいるらしい。人の気配がある。
ただベットに合わせてカーテンで区切られているので生徒の顔は見られなかった。
「おや、起きましたか。」
優しい声音が聞こえる。声の方向を見るとそこには保険医の先生がいた。彼女はエルフのフロア、長い耳にショートカットの金髪、そして丸いメガネをかけていた。
彼女の作る薬草は効果が高く、初日もお世話になった。初対面でここまで優しかったのはサリアと同じような感覚を覚える。
「…レイさんは?」
「彼女から伝言を預かってますよ。放課後に訓練場に来てくれと。」
ニレイルが死んでないことを考えると彼女にもなにか話したいことがあるのだろう。だからこそ伝言を残しているのだ。
放課後になり、ニレイルは訓練場に向かう。訓練場の中心、そこにレイは立っていた。初めて会った時、2人の位置は逆だった。そんなことを思いながらニレイルはレイに近づいていく。
「本当に...あなたは0番なんですか?」
レイはこちらを向かずに問いかける。その声に悲しみを乗せて。
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