第22話 アメリアとレイ
レダクローニ学校にいる職員に求められるものは強さと人間と共存しようとする意思だ。今の世界では人間が他種族を支配しようとする意思が強い。だが他の種族でそういった思想になるのは一部の過激派であり、それ以外のもの達は単に他の種族に興味がなかったりする。
ここで1番厄介なのが人間の権能だった。人間のスキルの権能は様々なものがあり、対処が難しい。ひとつのスキルに対処しても他のスキルに対処できるとは限らない。
そしてもう1つ、それは気の権能についてだ。人間以外の種族は生まれた時点で強さが完成されていると言っても良い。もちろん努力次第で更に権能の使い方が上手くなることもあるので成長しない訳では無いのだが、人間の気に関しては努力すればするほど強くなる。
生まれた子供は他種族が強くても結果的に努力すると人間が最強になる。ただその分人間には寿命が他の種族に比べると短いという弱点もあるのだが。
だからこそ人間の共存を掲げているが綺麗事ばかり言っていられない。武力行使が必要とまでは言わないにしても話し合いをさせるために強さは必須だった。
だからこそ職員にもそして生徒たちにも強さが求められていた。
「なかなか面白いなぁ!だがまだまだだ。」
大剣を持った大男、ガノフがアメリアとレイを前にして笑いながら話しかける。先程から戦いが続いているが、お互いに決定打がない状態で戦いが続いている。
アメリアは魔法でレイを援護している。相手は姿からして近接、この状態が1番生存率が高いと予想し、それが幸をなしていた。
と2人は思っていた。それはヘイルが弱体化の魔法をかけていたからであり、それが今、解けてしまったのだ。
「…なるほど。どうやら当たりは他が引いたらしいな。それじゃ、やるか」
右手を閉じたり開いたりしながら、自身の体の変化にガノフが気がついた。ガノフはレイに近づく、そのまま大剣を振り下ろそうとした。竜神族は頑丈だ、剣で斬りつけられても並大抵の腕前では斬る事ができない。だからレイは先程と同じように腕で受け止めようとした。
「いけません!」
アメリアは風の魔法を発動させあえてレイにぶつけた。体が吹き飛ばされレイはガノフの斬撃を避ける。ガノフの大剣はそのまま地面を抉りとったのだ。
先程よりも巨大な衝撃にレイは驚く。アメリアは魔族であり、魔力の動きや魔法の察知ができるのでヘイルの魔法が切れていたのがわかったのだ。ただここまで弱体化に効果があったとは思わず、歯噛みする。
ガノフは地面に少し埋まる大剣をそのまま横に振るう。剣の腹に当たる地面の欠片がレイに襲いかかる。レイは腕で顔を覆うが、痛みがレイを襲う。
「お前の方がめんどそうだ!!」
ガノフは今度はアメリアの方に向かい、また大剣を振り下ろそうとする。アメリアは魔法で鉄の鎖を自身の周りに出現させ、体を覆うように鎖の球体を生み出す。
だがガノフはそんなことを気にもせず鎖ごとアメリアを叩き潰した。だがガノフの手に感触はない。本当に鎖だけを斬りつけたような...。
「スリープ」
ガノフの後ろから声がする。アメリアは体を霧状に変化させ、ガノフの後ろに回り込んでいた。ガノフが振り返る前、アメリアの魔法が発動する。
アメリアの魔法は睡眠魔法、ガノフは眠りそうになるのだが、大剣を足に突き刺し、眠気を堪えた。
間髪入れずにレイがガノフの顔面を蹴りつけようとした。だが蹴りを繰り出した右足をガノフは捉える。
「さよならだぜ!」
ガノフはそのままレイを振り回し、自身の足に突き刺した剣の刃にぶつけようとした。ガノフの力は強い。おそらくこのままぶつかればレイもタダでは済まない。
(このままじゃ...死んじゃう!?)
レイは自分の体が真っ二つにされると思った。だが体に感じたのは剣の冷たさではなく、人の温かさだった。
「間に合って良かった。。大丈夫か?」
レイの危機に現れたのはニレイルだった。ニレイルは剣に叩きつけられそうだったレイをその体で受け止め、それを阻止したのだった。
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