第20話 メイド

 ヘイルが倒される少し前、ニレイルはクロコを抱えて次の敵を目指す。気を周囲に放っており、辺りの状況はずっと確認している。1人がどうやら身を隠しているようだが、彼は別に問題ないと思う。

 敷地内に入った瞬間にサリアは敵を認識していた。それであるのに全員がバラバラの位置に出現した。そして1人は身を隠して戦闘に参加する素振りがないとなるとおそらくその1人は相手を転送する類のスキル、戦闘要員では無いのだろう。

 サリアは今、3人の敵を倒してこちらに向かっている。その進みは少し遅い、どうやら生徒たちを気遣っているらしい。

 いつもの酒場にも敵は現れたが、どうやらマスターが倒したらしい。残るは寮にいる2人、空を飛んできた1人、そして商店街に元々いた1人だった。

 ある程度戦況を確認している。寮の1人は今武器でボコボコにされているのを感じているから大丈夫だと思う。

 寮にいる大剣を持った方は今2人がかりで戦っているらしい。2人がかりということはおそらく生徒が戦っている可能性が高い。

 そして商店街にいる1人はもう1人の長い耳を持った女性と戦っている。戦闘は拮抗しているようだが...こちらも怪しい。生徒が戦っている可能性だってありうるのでここが1番不安なのかもしれない。

 そして最後に空で接敵したもの、今は地上に降りて戦っているが...こちらは安心している。

 サリアの隣に立ち、空を飛んで寮に向かったということはおそらく戦っているのはベロニカだろう。


「彼女なら安心だろう。」


 そうしてニレイルは1度、クレアの方に向かったのだった。彼がベロニカに会った時の印象はただ1つ、ベロニカは自分に似ているということだった。



 ベロニカの敵である男の名前はグロウ、Aランクの冒険者でありスキルも弓で、何も無いところから光の弓を出現し放つことが出来る。もちろん矢も光でできており、無限に放つことが出来るので有用なスキルだと言っても良い。ただ相手が悪かった。


「クソ!!」


 同時に光の矢を3本放つのだが、ベロニカがいつの間にか持っていたナイフで切り裂いた。


「お覚悟を。」


 冷たい声がグロウに突き刺さる。グロウは更に矢を放つ。だが1つもベロニカに当たることはなく距離を詰められる。

 グロウだって逃げながら放つのだが、その距離は段々と近づいていく。ついにはグロウは追いつかれ、目にも止まらぬ速さで切りつけられた。

 鮮やかな手腕、痛みすら感じないその斬撃はグロウの手足の腱を切り裂いていたのだ。


「サリア様に感謝してください。あの方の命令がなければ敵であるとわかった時点で殺していましたので。」

「ぐわぁぁあ!!!」


 ベロニカはグロウの首元に手を置き、電気を流した。動けないグロウは避けるすべもなく、意識を失ったのだった。

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