第16話 学校長たるもの
サリアの前に現れた3人は自身が何をされたのか分からない。3人はそれぞれAランク、Bランク、Cランクの冒険者だった。他の場所にいるものたちに比べると比較的、戦力が低い部類だ。だからこそ、相手の力量が分からない。
だが相手は1人、しかも魔族であるのなら勝機はある。なぜなら人間とは違い魔族は人間の劣等種であると教わってきたのだ。
今まで何人かの魔族と戦ってきたが、難なく勝つことが出来ていた。それが彼らの自信となる。ただ彼らは恐ろしい程に現実を直視していなかったのだ。
魔族と戦った時は自分たちが主体的に動いていなかったこと、そしてサリアが強すぎることに。彼らは仲間の実力をさも自分の実力であると錯覚していたのだ。
「いくぞ!」
3人の中で1人、Aランクの冒険者がリーダー的な立ち位置となり、全員に指示を出す。それに合わせて連携とは呼べない粗末な特攻が行われる。
「そうか...貴様たちは取るに足らないな。」
この学校はサリアが魔法で作っている。その際、サリアは学校に仕掛けを施した。本来、魔族の権能である魔法の使用は、エルフの権能である精霊を操るものとは違い、自身の体内に生成された魔力を扱い、魔法を発動させる。
魔族の体内では魔力を永遠に製造しているのだが、魔力を体内に留めておける量は個体差があった。保存できない魔力は空気中に発散してしまう。その発散分をサリアは学校という器に移し続けていたのだ。そしてその魔力をサリアは無条件で扱える。
だからこそ魔力の消費が多い瞬間移動を使うことが出来た。長年貯めてきた魔力はそう簡単に無くなるようなものではなかった。
「
サリアが魔法を発動させると3人の足元から黒い鎖が出現した。突如現れる鎖に対応できるようなものはこの中にはおらず、全員がその鎖に雁字搦めになってしまう。すると3人がその場に倒れ込んだ。
「うっ...重い......。」
1人がなんとか口にする。この鎖に触れた瞬間、体が重くなるのを感じる。それこそ、なんとか口を開けるぐらいに。鎖は、というより自分の体が徐々に重くなる。自重で息苦しくなり、呼吸すらままならなかった。
「私はこの学校の長だ。貴様らのようなものに遅れを取る訳には行かないのだ。目が覚めた後に事情を聞かせてもらうぞ。」
サリアは1つ指を鳴らすと黒い鎖に電気が走った。強力な電気は彼らに叫ぶことを許さず、その場で意識を刈り取ったのだった。
サリアは彼らの意識がないことを確認すると黒い鎖の魔法を解除した。
敵は10人、あとは7人と言った所だろう。他の7人はこんな簡単には行かないかもしれない。それにもし敵に回復が可能なものがいるのなら、3人が目覚めた場合に対処するためにも、見張りは必要だ。
「そうだな、危ないのはむしろ寮の方、なら落ち合うのは寮で良いか。あそこにはヘイルもいるのだ。」
1人で呟くと先程、学校の敷地内に放った拡声魔法を発動させる。
『全員、敵を倒した場合、そいつらを運んで速やかに寮に集まってくれ。』
サリアは3人を抱え、寮の方へ飛んでいくのだった。
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