学校統一大会④

 昼食を食べ終わり、また学校統一大会が始まる。ここからさらに戦闘が激しくなることが予想される。それはレイにとっても同じことであり、先程とは違い、簡単に勝てるような相手ではなかった。

 しかし、負けることもなく彼女は2年生という異例の学年で決勝まで進出することになった。


(ただ、あの子...結構強いぞ。)


 ニレイルはレイの対戦相手について考える。黒い角と尻尾、翼から魔族であることはわかっている。髪を2つに結びツインテールのような髪型、そしてさらに特徴的なのは黄金の瞳だった。

 彼女はアメリア、今年は5年生なのだがその実力は年上の6年生も凌ぐほど。アメリアとレイが会場の真ん中で向き合う。


「あら?今年はちゃんと戦うのですね。去年とは違って。」

「なにか不満でもあるんですか?」


 アメリアの嫌味のような言い方が少し気になりながらレイも負けじと言葉を放つ。


「いえ、ただやっと竜神族と戦えると思って。本気で行きます。」

「私も全力です。」


 両者の視線が火花を散らしている。2人は既に戦闘態勢だった。それを見た教員が右手をあげる。


「それでは決勝戦、開始!」


 右手が振り下ろされ、試合が始まった。すぐさまアメリアが右手から炎を放った。だがレイはそれを避けようとはしない。彼女にとって炎は身近なものであり、なんの脅威もなかった。

 炎から出てきたレイがアメリアを殴りつけようとしたが少し後ろに引かれ避けられる。拳は地面にぶつかり、地面にヒビが入る。


「やはり、力は強いですね!サンダーボルト!」


 今度は右手から雷を放つ。だがレイは右手で雷を振り払う。レイには生半可な魔法は効かない。今の雷も避ける必要さえないほど竜神族の体は頑丈だった。


「そうですか...じゃあこっちなら?」


 アメリアから禍々しい色のモヤのようなものが溢れ出す。だがレイはそんなものを気にせず突っ込んだ。


 すると突如視界が変わる。今までの会場とは違い、自然に囲まれた家、ここは...見間違えるはずのない竜神族の里だった。


「レイ」


 名前を呼ぶその声にレイは泣きそうになる。だって今までずっと求め続けていた声だったから。だがもう彼はいないはず、もう死んでしまっているのだから。


「お父さん?」

「大きくなったな。」


 振り返ると前と変わらない姿の父が立っていた。それが嬉しくて、嬉しくて...。父に駆け寄ろうとしたレイ、だがそれは叶わない。黒い人型の影が父の首をはねたのだった。

 ああ、これは夢か...。嫌な夢だ。だがおかげで自分のやるべきことも思い出した。レイは涙を流しながらその名前を叫ぶ。


「0番んんんん!!!お前は!お前は絶対殺す!!」


 黒い人型を殴りつけると視界がまたいつもの光景に戻った。後ろを振り返るとアメリアが驚いた表情をして立っていた。


「驚いたわ。まさかあの霧から抜け出せるなんて。」


 アメリアの魔法は相手のトラウマを見せて戦意喪失させるものだった。だからレイはトラウマの夢に囚われて動けなくなるはずだったのだ。それが今は鬼のような形相でこちらを睨みつけていた。


「ええ、おかげで私の目も覚めました。これで最後です。」


 レイは大きく息を吸う。それはニレイルにも見せたレイの最高の一撃、危機を感じたアメリアは笑う。この攻撃を上回れば竜神族より強いという称号が手に入るのだから。


「いいでしょう。私も全力でいかせて貰います!ヘルフレイム!」


 アメリアは両手をレイに向ける。先程の炎とは打って変わって暗黒の炎がレイに迫る。レイも負けじと炎の咆哮を放つ。


(これはダメだな。)


 おそらくこの攻撃、どちらかがタダじゃ済まない。だからニレイルは剣を創造し、暗黒の炎と炎の咆哮の間に立つ。


「人間!?危ないですよ!」


 アメリアは焦ったように言い放つがニレイルは気にしない。

 この2つの炎がぶつかったら観客席にまで被害が及ぶだろう。ニレイルだけ助かるなら断空を使えば何とかなる。だが、それでは観客席が危うい。だから2つの炎を細かく切り刻む必要があった。

 ニレイルは全方向に向かって剣を振るう。ニレイルの剣が届く空間全てに斬撃の雨が降る。


斬雨きりさめ


 両者の炎はニレイルの剣の間合いに入った瞬間、粉々になったのだ。

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