第12話 影

 人間たちが住む王国、その一角に冒険者ギルドがある。冒険者ギルドの役割は国民からの依頼を果たすことにある。

 やれ魔族を殺せ、魔物の素材が欲しいなど様々な依頼を出される。普段はその依頼をこなすこと以外では冒険者が駆り出されることはまず無いのだが...。


「君たちにキルドラドの森の調査をお願いしたい。」


 冒険者ギルドの客室、その場にいる10人の者にギルドマスターが直々に依頼を行ったのだ。キルドラドの森というのは先の4人の冒険者が他種族を確認した森だ。

 彼の予想では他にも他種族が隠れている可能性が高かった。しかも人間が匿っている可能性が高い。

 人間社会では他種族は悪と見なされ、殺害が推奨されていた。人間が至高の存在であり、その他の種族は忌むべき存在だと子供の頃から教えられる。それゆえ匿ったものは重罪となるのがこの人間の国だった。


「我々を使うと言うと相当の手練か?」

「ああ、ソードたちのパーティーが手も足も出なかったらしい。しかも1人に」


 問いかけたリーダーらしき黒装束の男がそれを聞いて驚いた。ソードと言ったらBランクパーティーでもその経験から上位の実力を持っている。


「ほほう!それはいいことを聞いた!」


 後ろで聞いていた大男がその巨体に見合う大きな声で叫ぶ。それをリーダーが宥めようとするが、まあいつものことだし、無視することにした。それよりも大事なのは相手の力だ。


「ソードたちが見たのは鳥人族の少女と人間、だがそれ以外の者もいる可能性が高い。少なくとも鳥人族が1匹では無いだろう。」


 ギルド長に他種族の学校があるなんてことは知らない。故に鳥人族が他にもいるのではないかという予想しか今の段階では判断できない。

 それを聞いたリーダーはこの依頼の危険度を頭で計算する。しばらくしてリーダーが口を開いた。


「わかった。その依頼を受けよう。見つけた異種族はどうする?」

「それは殺して構わない。可能なら全滅させてきてくれ。」

「了解した。我々Aランクパーティー、影に任せて頂こう。」


 そうして黒い服を基調としたものたちは部屋を出て調査に向かうのだった。





「やっぱり来たか。」


 竜神族の少女との戦いの次の日、ニレイルは約束通り、訓練場にいた。もちろん今日の仕事は全て終わらせており、業務に支障はない。気配を察知して入口の方を見ると、昨日あった少女の姿がそこにあった。


「はい。あなたに勝てないようなら0番なんて夢のまた夢、それより本当に私を強くしてくれるんですか。」

「ああ、もちろんだ。」


 少女はニレイルの方に歩きながら話を続けていた。やがて2人の距離が1mほどになるとそこで立ち止まった。


「なら私を強くしてください。」

「ああ、それより名前は?」

「レイです。種族は竜神族、知っていますか?」


 ああ、知っているさ。何せ自分が滅ぼした種族なのだから。だがここでもニレイルは嘘をつく。いや、まだつかなければならない状態だったのだ。


「竜神族は初めて見たよ。改めてよろしくなレイさん。」

「さんはいいです。ニレイル先生。」


 こうして2人の奇妙な関係は続いていくのだった。

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