第10話 罪
クーを救出してから数日が経った。あれからグレイ先生がニレイルのことを良く話してくれることが多く、少しずつだが、授業に呼ばれるようになった。
と言ってもまだまだ始まったばかりで、生徒も先生たちも慣れておらず、グレイ先生のような質問に答えていく授業が多かった。
それでもまだニレイルのことを良く思っていない先生もおり、全てのクラスに行けている訳では無い。
そんなある日の夜、ニレイルはサリアに呼ばれていた。先生たちもこの学校の敷地内で暮らしているため、色々なことが出来るようになっている。
教師とは、というより大人は溜め込みやすい人も多い。今いる場所もそんな大人の息抜きのために用意されたバーだった。
店内は仄暗く、淡いオレンジの光が辺りを包み込んでいる。。サリアとニレイルはカウンターで隣に座る。
「今日は私の奢りだ。どれ飲みながら最近のことでも聞こうじゃないか。」
目の前のグラスにお酒が注がれる。ニレイルはこのようにお酒を飲むのは初めてだ。いつもは任務のための情報収集で飲むことが多かった。そのため酔わないように気を使い、回復していたのだ。
でも今は違う。普通にお酒を飲んだのだが...。
「ありがとうございますぅー」
ニレイルはお酒に弱かった。語尾が伸びてしまう。本人は真剣に言ってるつもりなのだが、言えていない。
「おお...もしかしてもう酔ったのか?結構弱い酒だと思うのだが。」
「酔って#%*@%よ。まだまだ...。」
何を言っているか分からない。サリアは初めて見るニレイルに驚きつつも要件を話す。本当は仕事について色々聞きたかったのだが、この調子ではいつ眠ってしまうのか分からない。
「そういえば...ニレイルは避けてる生徒がいるのか?」
「……います。」
顔を真っ赤にして先程までどこか揺れていたニレイルが急にピシッとなる。
「挨拶した時、一際殺気を放つ生徒がいましたァ。」
挨拶とは全校集会のことだろう。まだ酔いは回ってそうだが、頑張ってくれているのがわかる。
「彼女を見てから、彼女には会わないようにずっと気を操って位置を把握していました。」
これで合点がいった。実はサリアはその生徒に言われたのだ。ニレイルに会わせてくれと。一応、なぜ会いに行けないか聞いたのだが、仕事をしているはずのニレイルが視界に入ったことが全校集会以来なかったらしい。このことから避けられているとわかったらしい。
彼が避けているとなるとまず会うことは難しいのだろう。
「彼女の姿、そして強さを感じてわかりました。彼女、竜神族ですよね。」
「そこまでわかっていたか。そうだ彼女はレイ、竜神族の生き残りだ。」
竜神族というのは魔族のような角を2つ持ち、尻尾も生えている。違うのは翼がないこと、そして腕と足が竜のような鱗で覆われている事だ。
権能により、竜のような力を扱うことができ、種族名に神と名のつくほどその実力は高い。
ただ、彼らは長い寿命、そして強力な力を持つため繁殖が盛んな訳ではなくその数も少なかった。そんな彼らは10年前に滅ぼされたと噂されていた。彼女はその生き残りだった。
「その竜神族を皆殺しにしたのは僕なんです。」
どうやら単純な話ではなさそうだった。
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