怒り②

 相手は4人、1人は二刀流の剣士、先程から指示を出したり話したりしている所を見ると彼がリーダーだろう。

 そして杖を持つ女性が1人、彼女は光の鎖を出したり、電撃を扱う。おそらくそれはスキルだろう。人間にもスキルにより魔法を扱える人間が多数いた。

 もう1人は男性、大きな盾に剣を持つことからタンク役である可能性が高い。

 そして最後に女性、メイスを持っており聖職者のような姿をしている。予想ではあるもののスキルが回復系のヒーラー、バランスの取れたパーティーだ。


「これが最後だ。本当にやるんだな?」


 最終確認を行う。争わなくて良いならそれが一番だった。


「なんだ?怖気付いたのかよ!」


 そんなニレイルの最後の優しさを無視して、剣士の男と、盾を持った男が突っ込んでくる。ニレイルは槍を創造して、剣士に突きを放とうとした。


(これは...スキルか)


 剣士に放った突きは何故か盾の方に吸い込まれるように向かってしまう。剣士の男はその隙を逃さず、ニレイルに向かって2つの剣を振り下ろす。

 ニレイルは素早く槍を引き戻し、剣を防ぐ。しかし、2つの剣が槍を切り裂き、そのままニレイルごと切ろうとした。

 たまらずニレイルは距離をとるのだが、そこにまた光の鎖が来た。ニレイルは手持ちの槍を捨て今度は剣を創造し、光の鎖を全て切り伏せた。


(連携が良いな。あのタンク、少しばかし面倒だな。奴を倒さない限り、他の奴に攻撃が行かない。)


 タンクのスキルは陽動、攻撃が全てタンクに向いてしまうようだった。


「どうした?俺らの厄介さがやっとわかったか?」

「ああ、お前らの倒し方ならもうわかったぞ。」


 ニレイルの挑発に乗ってしまう剣士、怒りを顕にニレイルに迫ってくるのだが。


「まずはお前だろ?」


 ニレイルはそんな剣士を素通りしてタンクの前に出た。タンクは攻撃が来ると思い、盾をしっかり構えた。ニレイルは剣を振り上げたまま。


「くだらない防御だ。」


 ニレイルは盾ごとタンクの男を切り裂いた。胸が大きく裂け、大量の血が流れ出す。


「気を扱えるかどうか。人間同士での争いでは勝敗を大きく分ける要素だよ。」


 ニレイルが今教えたにも関わらず、男たちはニレイルの言葉が理解できない。剣士がニレイルに近づこうとしたがその前にニレイルは剣士の目の前に移動していた。

 驚いた男が剣を振り回すのだが、その程度のものがニレイルに当たるはずもなく、切り伏せられていた。

 ニレイルはもう刃向かえないよう、2本の剣を折った。そして折った刃を杖を持った女性に投げつける。


「クソ!」


 女性は光の鎖で剣の切っ先を払い落としたのだが、その瞬間には目の前にニレイルがいた。女性は魔法を発動しようとしたが、その前にニレイルの横一線、杖ごと女性の腹部を切り裂いた。

 残るはヒーラー役、だが彼女はそこまで怪我を負わせないことにしている。彼女がいたら彼らは死ぬ可能性が低くなるからだ。

 メイスを振りあげようとしたのだが、それを剣で斬ると、ニレイルは剣を捨ててヒーラーの首をつかみ、そのまま後ろの木に衝突した。

 ヒーラーの肺から空気が抜ける。何か液体も吐き出してしまう。


「いいか、ヒーラー。本当は貴様ら全員殺したいところだ。だが俺はもう殺しはしないって決めてるんだ。止血さえすれば全員死にはしない」


 すると右手から包帯や薬など様々な処置用の物を創造した。


「もう俺には関わるな。」


 ここだけの話、この女性はスキルで仲間を回復するだけで戦闘にはほとんど参加したことがないのだ。初めて感じる死に耐えられなかった。

 涙を流しながら頷く彼女を離すと、ニレイルはクーの方に近づいた。

 仮にニレイルが死んだとしてもサリアが来るまで耐えれるようにこの檻には出入口がなかった。力任せに無理やり檻をこじ開ける。


「もう終わったから行こうか。」


 ニレイルはクーを抱えると学校に向かって走り出すのだった。

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