授業②

 ニレイルは言葉を選ぶ。それと同時に生徒たちの真剣さが増していく。ここでの解答が今後の彼らのニヘイルに対する人物像に直結するのだろう。


「一応、ここに来る前に今言ってくれた種族の人達とはあったことがあります。

 君のような魔族の人達は全員頭がよく回る印象ですね。サリア様のような優しい人もいる。」


 魔族と人間、1体1なら基本的に魔族が勝つだろう。戦闘に置いてもその他に置いても魔族は人間よりも優れた部分が多い。

 ただ数が人間に比べて圧倒的に少ないこと、そして魔族は戦いに置いて策略を回そうとしない。だからこそ、人間に殺されてしまう。


「レイスは少し心配ですね。他の種族とは違い体が透けて病弱のような印象です。でもグレイ先生のように心が熱い人は多いと思います。」


 生徒の手前、声は出さないが、後ろの方でグレイ先生が泣いているのが見えた。こういう人情に熱い所もレイスの魅力なのだろう。


「エルフの方は自然を愛している。権能が精霊の力を使うということも関係していますが、自然のことに関して彼らの上に立つものはいないでしょう。それほどまで彼らの住む場所は自然豊かだ。心が癒される。」


 エルフは森の中に住居を構えるものが多い。自然との親和性が高いのだ。


「そんなエルフに近いと感じるのがドライアドです。彼らは長寿ということや木を操ることが権能であるため、おっとりしているイメージですね。焦った時は彼らを思い浮かべます。」


 エルフが自然ならドライアドは植物専門というイメージだ。故に森から出ることが少ない。故に彼ら独自のゆったりとした空気がある。心を落ち着かせるには彼らと関わった方が良い。


「人狼は大変なんだと思います。常日頃は人間と同じ姿なのに、満月の夜になると力が溢れてしまう。しかも理性さえ無くしてしまうというのは大きなデメリットでしょう。ですが、それが彼らの本能であり、自然体になれる唯一の時間だと思うので羨ましくも思います。」


 人狼は人間社会で暮らす者も多い。ただ満月の夜になると理性を失ってしまうことから、彼ら自身の村落で暮らし、他種族に迷惑をかけないようにしようとする優しい種族だ。


「最後に鳥人族ですが...彼らは色々なことを忘れがちと言われてますがそれでも明るく振る舞えるのは彼らの持ち前の雰囲気なのでしょう。それには僕も元気を貰えました。

 それに...彼らは人の顔と名前を忘れることがありません。自分の名前さえ忘れるものもいる中、相手の名前だけは必ず覚える。彼らほど人情に厚い人もいないでしょう。」


 鳥人族は忘れっぽいのもそうだが、権能が飛行のみという弱い種族でもある。だからこそグレイはクーのことを気にしていたのだろう。

 それでも鳥人族の者は生きている。それはその弱さを超えるほど人々の心に刻まれる存在であるからだ。

 他種族でも鳥人族と関わった者で大切な人で鳥人族を挙げるものは多い。


「わぁー!!用務員さん!」


 輝く笑顔で飛び上がり、クーがニレイルに抱きついた。それほどまでにクーは嬉しかったのだ。自分たちの種族をここまで理解してくれる人はなかなかいない。それでも彼は我々を理解してくれると。

 ニレイルは嬉しくも、やはり過去の自分を見つめてしまい、複雑な気持ちになった。

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