第6話 授業
「おはようございます...今日はよろしくお願いしますね、ニレイル先生...。」
何やら元気の無い様子でグレイが話しかけてくる。おそらく、今日の授業について色々考えてくれていたのだろう。
「ニレイル先生には生徒たちからの質問に答えてもらうだけで良いです。
最初は私から人間についての歴史を前回の授業同様に教えていくのでその時は後ろの方で聞いておいてください。」
そのような話をしているうちに1年2組の教室に到着した。途中、生徒たちの姿が見えたが、話しかけてくるような素振りはなかった。ただ視線が集まっていたのはわかった。
グレイに続いてニレイルも教室に入っていく。
「ああー!用務員さん!」
すると前の席に座っていたクーが立ち上がり、ニレイルのことを指さした。飛び上がってニレイルに近づきそうになるのをグレイが止める。
「はい少し待ちなさい。先生の授業の後にニレイル先生への質問コーナーを設けますので、しばらく待ってくださいね。
ニレイル先生、後ろの方で授業を見ていてください。」
先程までは自信がなさそうにしていたのだが、教室に入った途端、グレイの顔つきが変わった。これがグレイという教師なのだろう。
ニレイルは教室の後ろで立ちながら、グレイの授業を聞いている。
こうして見ると、この学校の特殊さというのが身に染みてわかる。命令の関係で人間の学校や、他種族の学校の在り方などを学ぶ機会があった。
基本的に同種族が集まるはずなのにこの教室だけでも様々な種類の種族がいる。まあ学園長であるサリアが魔族であるということもあり、魔族の比率は高めだとは思う。
そして人間についての歴史、人間の学校では美化されたものが多い。一方他種族の学校では人間は他種族を排斥する悪くて、タチの悪い種族であると教えていた。
それもそのはずだ、そうでもしなければ人間を信じてしまい、人間に騙されるような者も増えてしまうだろう。
しかし、この学校の授業、まあこれが初めて見るのだが、少なくともグレイの授業はその2つとは別だった。
淡々と事実だけを述べている。人間を擁護するようなものでもなくただその歴史が事実であり、こういう人間もいた、今いる人間が必ずしも全員そうとは限らない。
事実は教えるので人間に対してどう思うかは生徒に任せるような、そんな授業だった。
まあここまで感じ取れる生徒が何人いるか、と聞かれれば当然少ないとは思う。それでも無意識の中に、人間との共存を選択肢に入れられるような授業だった。
「それでは、ここから待ちに待ったニレイル先生への質問コーナーに入りましょう。」
グレイ先生の授業は終わり、ニレイルとグレイの立ち位置が変わった。ここからは本当にニレイルだけで行わなければいけないのだろう。
「では質問のある方は挙手を」
グレイが後ろの方から指示を出してくれる。すると驚くことに全員の手が上がったのだ。まさかここまで聞きたいことがあるとは思わなかった。
グレイが生徒を指名して質問に答えていく。
「好きな色はなんですか?」
「黒です。」
「好きな食べ物なんですか?」
「うーん、肉料理が好きです。」
「じゃあ最近嬉しかったことはなんですか?」
「それは...学園長に助けられたことですね。」
「そうなんですか?どうやって助けられたんですか?」
「それは恥ずかしいので内緒で...。」
質問は意外なものが多かった。人間について聞くのかと思いきや、自己紹介の延長のような質問が多かった。
生徒としては人間と他種族が同じことを感じるのか知りたかったのかもしれない。意外と自分たちと同じような感覚があると分かれば、ニレイルのことを怖いと思う人は減るかもしれない。正直油断していたんだと思う。
「じゃあ先生、このクラスには魔族、エルフ、鳥人族、ドライアド、人狼、グレイ先生も合わせればレイスって種族がいると思うんですけど、それぞれの種族に感じることを教えてください。」
1人の魔族の少年が質問をした。ここでの解答は重要になることなど、全員の顔を見れば分かることだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます