第4話大捜索、そして別れ
辺りは闇につつまれている。
夥しい数のサーチライトがゆらゆらと揺れて闇夜を照らしていた。
県警のテントではすっかり項垂れた両親がパイプ椅子に座り母は嗚咽していた。
うぅぅぅ…りゅういちぃぃ、りゅうじぃぃ
どこぇいっちゃったのぉぉ、わだじがちゃんとみでいでばぁ、ごんなごどにぃぃぃ…
父はその様子をみて妻の背中を擦る。
ほらっよくみてみろよ、皆さんが懸命にふたりをさがしてくれてんだろ?
おまえがそんなんじゃぁふたりが戻ってきた時にかなしむだろうがぁ~
目に涙を浮かべながら妻の背中をゆっくりと擦りあたりを見回す。
遠くでは大声でふたりの名前を呼ぶ声が木霊している。
おぉぉぃ、りゅうじくぅぅん、りゅういちくぅぅん、いたら~返事~してくれぇぇ~。
100数名の大規模な捜索救助だがふたりの安否は不明。
少し離れた所にはテントとコンパクトな竈の上に鍋があり、中身のカレーはすっかり冷たくなっていた。
電波が届かない山中ではトランシーバーで会話しており、テント内にいる課長らしき人物は入ってくる連絡ひとつひとつに大声で指示を出している。
午後9時をまわる頃、ひとつの連絡に皆が浮き足立つ。
こちら、捜査員212、本部応答ねがいます、ザッ
ザッ、こちら、本部。212、状況を説明、ザッ
ザッ、はっ、只今付近の洞窟の中の壁面にある窪みで幼い子供の洋服と下着、靴と靴下を2名分発見、どうぞ、ザッ
テント内にいる全ての人間が椅子から立ち上がりスピーカーに釘付けになる。
ザッ、そこにあるのはそれだけなのか?どうぞ、ザッ
ザッ、そうです。今慎重に発見したものを袋に入れていて、あっ駄目だそれじゃあ、一緒にするんじゃないっ、ふたり分だから別々に袋に、
課長、すみません、新入りがっ。
格納次第本部に届けます、どうぞ、ザッ
ザッ、よくやった。引き続き周辺の捜索、宜しく頼むぞ、どうぞ、ザッ
おぉぉぉぉ、
大歓声が闇夜に木霊し拍手する者もいる。
課長がハンドマイクを持ち闇夜に叫ぶ。
捜査員につぐぅ、聞こえたかぁ、洞窟へ集合ぉ!
全員で中と洞窟周辺を隈無く探せぇ!
遠くから、返事が帰ってくる。
闇夜のサーチライトが同一方向へ一筋の光となり山道を照らし出す。
、、、、、、、、翌日午前5時。
少しずつ闇夜が薄れていき、BlueMomentに変貌していく。
遠くから人影がゆっくりと足取り重くゆらゆらと揺れながらテントに近づいてくる。
テント内では行ったり来たりを繰り返す父の姿とそれとは対照的にぐったりしている母がいた。
テントの前では課長並びに配下の警官が数名、横並びに立っている。
課長がハンドマイクを持ち叫ぶ。
全員、駆けあぁしぃ!せいれぇつぅ。
各班、点呼。
全10班の班長が先頭に立ち、部下に怒号する。
10人の声が交錯し点呼し始めた。
第一班の班長が全班長に確認し課長の前に立ち報告する。
総員108名、異常ありません。
敬礼をして隊列に戻る。
課長が叫ぶ。
皆、よくやった、お疲れさん。
本日はこれで終了だ、発見した物は鑑識にまわして徹底的に調べさせる、以上、解散。
皆が課長にならって敬礼し、各班が纏まって擦り合わせをしている。
課長が両親の前に立ち、静かに話し出す。
昨日からの大捜索は本日5:24をもって一時解散します。
お疲れでしょうからお家に戻られてお休み下さい。
次回の捜索は本日12:00より再開致します、それまではゆっくりされてはいかがですか?
言い終わると踵を返して部下の元に移動し小さな声で会話をし始めた。
両親の前に女性警官が立ち
これをお飲みください、気分が落ち着きますから。
そういって差し出したのはハーブの香りだろうか、嗅ぐと何故か自然と落ち着いてくる。
差し出したのはカモミールティー、女性ならではの配慮だろう。
両親は受け取った紙コッブの液体をゆっくりと啜る、味を確かめたのかふたりは顔を見合わせる。
顔の強ばった父、涙と鼻水で化粧が落ちている母。
ふたりは少し微笑み、液体を飲む。
この後捜索が難航する事も知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます