第3話悪魔の巣食う洞窟
両親が夕食の支度をしている頃、龍一は龍二を連れて森の中へ足を踏み入れていた。
木漏れ日が黄昏色に変わる、だんだんと辺りが暗くなっていく。
いちにぃ、なんかこぅわぅぃ~、弟
うるさいなぁ、おまえはいちいち、いいから黙って俺についてくればいいの!、兄
風が吹く度に木々が揺れざわざわと音を立てる。
どのくらい歩いたのだろう、薄暗い中に小さく洞窟が見え始めている。
あれはなあに?、弟
へへぇん、あれが俺の秘密基地さ、兄
えぇ~ひみつきち?、弟
そう、おまえはまだ小さかったから覚えてないだろうけど、前にきた時に見つけてさ、奥までは、そのぉ、なんだ、まぁとにかく!父さんと母さんには絶対に内緒な、兄
だんだんと入り口が大きくなる洞窟。そして幅が2メートルはあるだろう入り口に到着した。
なんかくらくてこわぁいぃ~、弟
龍一があたりをキョロキョロしながら奥へと進む。
おまえ、ほんとに怖がりだなぁ~、でもこれを、見たらぁ、、あれ?前に隠しておいたきれいな石がない!、兄
キッズスマホのライトが辺りを照らす。
壁と地面の境界線にぽっかり空いた子供がふたり入れそうなくぼみには床一面に枯れ葉があり、龍一は空いている手でがさがさどけながら目的のものを探しているが見つからない。
龍二は兄の背中を見つめながら、
いちにぃ~、もうもどろうよぉ~、おなかすいたぁからぁ、
半べそをかきながらもぞもぞしている。
もうちょっとまってろよぅ、あれぇ~
あれぇ~
ここじゃないのかなぁ~
確かここのはずなんだけどぉ、
地面ばかり見ていた龍一がふと顔をあげる、
ライトが壁を照らす、
なに、これ、
こんなの前はなかったのに。
ってか気がつかなかっただけ?
照らされた壁の紋様、経年を感じさせるそれは美しい女性の様にも見えるのだが、龍一にそれは違って見えた。
そのおんなのひと、きれいだね。
背中から聞こえる弟の声に
おまえ、何言ってんの?女?
どう見てもこれって悪魔なんじゃ、と言いかけたその時に紋様がゆっくりと動き始め変化してゆく。
な、な、な、な、なんでかっ壁、
後退りする龍一。
どうしたの?いちにぃ。おんなのひとわらってるでしょう?
弟の足元まで戻る兄。
だ、だ、だ、だってさぁ、悪魔が、悪魔が。
いつしか立場が逆転し兄が半べそ、弟は嬉しそう。
龍二が落ちているキッズスマホを拾いくぼみに入る。
お、おまえ、何してんの?やめろって!
四つん這いで壁に近づく龍二、窪みの外でガタガタ震える龍一。
目の前に壁が近づいたその瞬間、まばゆいばかりの閃光がばちっと音をたてふたりを飲み込んだ。
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