第23.5話 真祖狼

 Side:???


 常闇の森の奥地。苔の生えた大岩の近くにある大きな洞窟。

 赤月の光も届かないその場所こそが、人狼たちの根城だった。


吸血鬼ヴァンパイアガ、人間の傭兵を雇ったようダナ』


 迷宮のように入り組んだ洞窟の奥。

 骨の山の上に築かれた寝床に座するのは、一際大きな体格の人狼だった。


 この魔獣の名は、真祖狼リュカオンという。

 強靭な肉体を覆う漆黒の毛皮。強化魔法を操る知性。

 それらを兼ね備えて人狼種の頂点に君臨するS級の魔獣であった。


『ああ、そのようだ』


 そんな人狼の王と対話するのは、フードで顔を覆い隠した男だった。

 男は真祖狼リュカオンの前でも臆することなく、平然としていた。


『俺ハ、どうすればイイ?』


 低くしゃがれた声で、真祖狼リュカオンは問う。

 すると男は口の端を吊り上げ、不敵な笑みを見せた。


『何もしなくていい。お前に渡した力に──神の力に勝る人間など存在しない』


 彼が纏う漆黒の外套。

 そこから滲み出すのは、神々しくも禍々しき気配だった。

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