第3話 Point of No Return


 私は、迷走していた。

 芽が出ない。

 時間だけが過ぎていく。

 二十五歳と設定したはずの締め切りは当たり前のように延長して、第二目標を三十路までと定めた。


 私の両親がうるさい!

 生活は安定しているのか、地元に戻ってこないのか、そんな内容ばっかり。

 心配なのは分かるけど、そんなの私自身が骨身に染みて分かってる!

 同窓会に出た時も、友達の結婚式の時も、何度も「このままでいいのかな?」って思った!

 父とは相変わらず話さない。八つ当たりの気持ちもあるけど。

 せめてもの情けで既読はつけてあげるし、気が向いたらスタンプくらいは送ってる。

 近況を知りたいなら母を経由すればいい。

 あの日の発言は絶対に許さない!

 


 私はそれでも諦めない!

 仕事柄たくさんの作品に触れる中で、それでもと言い続けたロボットアニメがあった。

 あれは刺さる、刺さり散らかる。

 私も「それでも!」と言い続けなきゃ!


 転生ものがいいのかな?ダンジョン配信が流行りでウケがいいのかな?そんなことは何年も考え続けた!

 でも私は私の信じるハイファンタジーを書きたい!

 人間がいてエルフやドワーフがいて、ドラゴンや闇の者と戦う……血湧き肉躍りながらも深みのあるファンタジー作品!

 別なロボットアニメでも「お前が信じるお前を信じろ」という言葉が胸に響いた。

 そう考えたらアニメからも大切なことをいっぱい学んだかもしれない!



 二十八歳の冬。

 父が反省していたと知る。

 きっかけは母からの電話、他愛のない雑談の延長だった。


「お父さん、だいぶ気にしてるみたいでね」

「なにが?」

「既読だけで、返信してあげてないでしょ」

「そんなに珍しいことじゃないよ」


 珍しいことではない、それは事実!

 良好な親子関係でも既読無視や非表示、雑な対応をとる友達だっている!

 推してるVTuberも父親に塩対応してるっぽいし!


「お父さん自分なりに心当たり……考えてみたんだって」

「ふーん」

「こんな、こんな、って小言うるさいところあったからねぇ、あの人昔から。それが原因か?って自覚はあったみたい」

「あったねー小学生の時から。お母さんも言われてたの?」

「それはもう、たくさんね。何度もよ」


 こんな時間まで起きていて大丈夫なのか?

 こんなに食べて大丈夫なのか?

 確かに、飽きるほど聞いていた。


「お父さんねぇ、心配症なのよ」


 私は思い違いをしていたのかもしれない。

 父の性格や更新された情報を照らし合わせると、私がたまたま「小説」に傾倒していたから〝あの言葉〟が生まれただけ。

 他の何かをしていたとしても、きっと「こんな〇〇をしていて受験は大丈夫なのか?」って、聞いてきたように今は思う。

 ましてやそれが我が子の人生を左右する高三の夏休みときたら、なおさらのことだ。


 作品を貶していたわけじゃなくて、親心からきた言葉だったのかもしれないなぁ。


「お父さんから伝えて欲しいって頼まれたんだけど」

「うん?」

「何を頑張ってるか知らないが、何かを成そうとしているのはわかる」

「すごいじゃん、お父さん」

「だから応援してる……だって。確かに伝えたからね」

「ん。心配かけてごめんって言っといて」

「たまには自分で返信してあげたら〜?」

「うるさいなぁ、もう切るね!」


 私はもう少しだけ、意地を張り通す!



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