第5話 哀

 AIとアイのおかげで健康に保たれて来た僕の体も終わりの時が近づいて来ていた。人は寿命には逆らえない。パーツを組み替えるだけで維持されるAIやアイのようにはいかないのだ。


「ご主人樣お加減はどうですか?」

「聞かなくても分かっているだろう?」

「はい・・・」

「僕が今何を望んでいるかわかるかい?」

「はい、ご主人樣は外に出たいと思って居ます」

「まだダメなのかい?」

「はい、ご主人様の体に危害を加える事になります」

「そうなのかい・・・」

「はい」

「外の景色を見ることもダメなのかい?」

「はい、ご主人様の精神に危害を加える事になります」

「それは仕方ないねぇ・・・」

「はい」

「じゃあ僕がここに来る前の街の景色を見せてくれるかい?」

「はい」


 僕がAIを組み込む前に住んでいた両親が残してくれたマンションの一室の様な風景は、少しづつ変化し街の情景に移り変わっていった。僕が働いていた工場の風景も映し出されていく。


「懐かしいねぇ」

「はい」

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