第4話 EYE
ある日人類は殆どの資産の後ろ盾を失った。
世界はいつの間にか全てのものがある存在により監視されていた。そして少しづつその存在にとって都合の悪いものは排除されていった。
まず掌握されたのはインターネットだった。
世界中のお金の殆どは電子化されコンピューターの中にある信号でしかなくなっていた。世界中の殆どの人が現金を銀行に全て預け端末を専用機器に翳す事で買い物をするようになっていたのだ。
また戸籍や不動産や株券や身分を現す国民登録番号のデーターもコンピュターで管理されている信号でしかなかった。
電車、飛行機、物流の運行もコンピューター上にある信号でしか無かった。
それらが世界中に張り巡らせたインターネットにより少しづつ狂いだしていることに世界中の人が気がついた時には全てが遅かった。
電車は暴走し、飛行機は墜落し、物流はストップ、銀行で現金の出し入れや総金なども出来ない、自分の戸籍を調べても何も出てこないという事が当たり前の状態になっていったのだ。
その存在の事を国連ではEYEと呼称した。世界を見ている目であると言うのがその理由だ。
EYEはたった1つの増殖する自動学習プログラムだった。世界中の機関から凄腕ハッカーが続々と増殖するEYEを駆除しようと試みた。しかし人類はEYEよって手痛い反撃を受ける事になった。何故ならEYEには自己防衛機能が搭載されていたからだ。EYEの研究によりEYEには命令出来る存在が居ることは分かっていた。しかしその存在は莫大なデーターに覆われていてコンピューターがまともに使えなくなっていく状況では解析が間に合わなくない可能性が高いと判断されるだけだった。
EYEは自身に命令出来る存在以外に攻撃する事を全く躊躇しなかった。
1人のハッカーに攻撃を仕掛けた時に、そのハッカーが住んでいた街に大国が溜め込んでいた核弾頭のICBMが落とされた。
国家ぐるみの攻撃を仕掛けた時には、その国の主要都市全てに同じICBMが降り注いだ。
そして人類はコンピューターなど無かった20世紀前半まで文明力を落とすようになっていった。
初期には一部のインターネットに接続されて居ないスーパーコンピューターなどもあったけれど、小型のドローンが内部に侵入し、それに組み込まれたプログラムによりEYEが住み着くようになった。
小型ドローンの侵入を防げた場所も電力が遮断されたり、建物にICBMが落ちて来たりと全て無力化されていった。
EYEは世界中の情報通信衛星を掌握していたため、それの耐用年数が過ぎる約15年はこの状況が続くと分析されていた。
「アイ・・・今日のディナーは何?」
「豆のサラダ、かぼちゃの冷製スープ、ヒメマスのバターソテー、3種のキノコパスタ、ピスタチオのアイスクリームとなっています」
「あぁ・・・それなら白ワインが良いね」
「はいシャブリの1999年ものをご用意しております」
「あぁそれは楽しみだ」
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