第4話 大事件

「ふあぁ…寝ちゃってた…」


どうやら私は枠立てをした直後、椅子に座ったまま寝落ちしてしまっていたらしい


「今…何時だろ…?!」


時間を確認するためにスマホを開くと、大量の通知が飛んできた。


「え?!なに?!なに?!」


通知がどこから飛んできているのか確認する。


「Pwitter…?」


そう、スマホが鳴ってやまない程の通知を送ってきていたのは、Pwitterだったのだ


「えっと…なになに…え?!」


通知の内容を読み進めていくと、驚くことが目に入ってきた


「み、見てみないと…」


私は"それ"が本当かを調べるため、モニターの電源をつける


「え…あ…」


電源のついたモニターに写っていたのは、紛れもない、真っ暗な配信画面だった


「配信…開始されてる…」


そう、画面に映っていたのは、「12月8日22時に配信開始予定」ではなく、「配信中」の三文字だったのだ


「と、とりあえず配信落とさないと…」


パニックになりつつも、急いで配信を落として、状況を確認する



「なんで…あっ…」


なぜ配信が開始されたのか、原因を探していると、配信の枠を立てる時の設定が目に入ってきた。そこにはなんと、「12月5日22時に配信開始」と書かれていた


「8日じゃない…」


配信の枠を立てる時、日時を「8日」ではなく昨日である「5日」だったのだ


「ああ…やっちゃった…」


初配信前にミスして配信など、本来はあってはならない事だ


「トレンドも…あぁぁぁ」


Pwitterのトレンドは「伏見ルナ」や「寝息配信」など、私の配信についてのワードで埋まっていた


「クビかなぁ…これ」


当然のことだ、こんな事態を招いておいて、なんの措置もなしはないだろう


「うぅ……?」


不安と焦りで痛くなっていく胃を抑えていると、いきなりスマホが鳴り始めた


「で、電話…?」


このタイミングだ、どうせ運営の人からだろう、と思いながらスマホを取り、着信元を確認する


「れ、嶺二…さん?」


なんと、電話をかけて来ていたのは運営の人でも、同期の人でもなく、「瀧川嶺二」、社長だったのだ


「社長直々にクビ宣告…か」


もちろん私のやった事は重大だ、だが、社長直々に出るほど大きなことなのだろうか。と、そんなことを考えながら電話に出る


『やあ、由依くん、いかがお過ごしかな?』


「はい…まぁ…ぼちぼちです…」


『そうかい、悪くは無いようでよかったよ。じゃあ、明後日の配信も頑張ってくれたまえ』


「そうですよね…こんなことをしておいて…………って、え?」


この人が何を言っているのか理解出来なかった。当然だろう、軽くてもデビュー延期くらいの処分は喰らうと思っていたのに、「明後日の配信」ということは、クビどころか、デビュー延期すらないということになるのだから


『なんの処置もないのが驚きかな?』


「え、あ、は、はい」


『はは、そうかい。まぁ、何も無いに越したことは無いんだ、良かったじゃないか』


「ま、まぁ…その通りなんですが…いやでも…」


『じゃ、僕はそれを言いに来ただけだから。明後日、期待しているよ』


嶺二さんはそれだけ言って電話を切ってしまった。


「えっと…通常通りに配信してもいいんだよね…?」


「お咎め無し」その事実を再認識して、そう呟く。嬉しさと共に、大量のクエスチョンマークが頭の中に浮かんできた


「まぁ…いっか、変に探ってデビューできなくなっても嫌だしね」


そう思い、自分の中の疑問に蓋をして、スマホの電源を切って、パソコンをつける


「よし!配信準備頑張ろう!」

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