第39話 ビキニずれてるぞ

「何やってんのよっ!」


 バーテンダーの剣が、横から突き入れられた別の剣に跳ね上げられ、ギマリリスではなく虚空を衝いていた。


 剣を刺し入れたのはルサシネ。

 軌跡が半月を描くように剣を振り回し、相手の刃を弾き飛ばす。


「お、お前……」


ギマリリスは信じられないものを見る目でルサシネを見た。


「何よ、あたしが助けちゃ、そんなに意外だっての?」


「いや、お前、もっと弱いのかと……」


「うっさいわね! 助けて損した! あのね、これでも昔から家庭教師つけてずっと剣のお稽古し続けてきたんだからね!」


 ぷんすこ、と口で言いながら、ルサシネは剣でジェレバンを斬りつける。

 その剣筋は、なるほど流麗であった。


 ジェレバンのゾンビはたたらを踏んで後退する。


「そ、そうか。いいとこの出なんだな」


「……っ、ちょっと! 話さないつもりだった過去まで喋ったちゃったじゃない、もう!」


「それは知らん!」


 ギマリリスも気合を入れなおし、立ち上がる。


 爆発の直撃を受けながら、なお戦闘を続行できるのは強靭な肉体を持つ彼女ならではであった。ほかの死体兵たちは燃え上っているというのに、炎は彼女の毛皮を焼くことはできていない。


 再び迫る死体兵たちを前に、背中を合わせて構えるルサシネとギマリリス。


「助けてもらったのには礼を言うが、アマゾオンの女王はいいのか?」


「一応、掘り出したわ。意識は無かったから、ホルシュに預けてきたわ。でも、さっきの光が吸い込まれなかったから、まだ望みはあると思う」


「そうか。それはいいニュースだ。下腹から闘志が湧き上がってくる」


 にやりと笑いながら、迫ってきた死体兵を殴り倒す。


「単純ね、あんた。ま、嫌いじゃないけど」


 ルサシネも笑い、剣を翻す。


 流れるような剣捌きで、燃え上がりながらにじり寄る死体兵を斬り伏せる。


「ふふん、やっぱ、あたし、やるじゃん! そうよ、魔獣にはちょっと緊張しちゃっただけで、やれば出来るんだから!」


 ふんすふんす、と興奮して飛び跳ねるルサシネ。


「そうか……それはいいが、ビキニずれてるぞ」


「ええっ!?」


ルサシネのビキニアーマーのブラが、豪快にポロリしていた。


「なによもう!!!」


「まぁ別に隠すほどの胸でもないだろう」


「あんたからブッ殺すわよ!!」


 言いながら、新たな剣を手に飛びかかってきたバーテンダーの鋭い剣閃を、滑るようにその上に刃を走らせて、斬って捨てるルサシネであった。


「どう?」


「見事だ。……だが、今度は下も落ちてるぞ」


 ビキニのパンツのひもがほどけ、下半身が丸出しになっていた。


「もうやだああああああああああ!!」


 ルサシネの絶叫がこだました。

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