第31話 ハーレムものの主人公みたいだろ?

「ど、どうしたんだよ?」


「そ、そうか。それで合点が行った……勇者マカナを倒したにも関わらず、なぜもう一人勇者が現れたのか……サキュレ様の勇者だったのだな……」


 ギマリリスの目から一筋の涙が零れた。


「サキュレ、様?」


「……知らんのか。ああ、デスマースのことゆえ、知らぬも無理はないか。サキュレ・バスティーシュ様は、慈悲の神だ。女神デスマリスに見捨てられし下名ら魔族に、救いの手をもたらした神と伝えられえている」


「ええっ!?」


「デスマリス神の手を離れたデスマースが崩壊の危機に陥った時、心優しきサキュレ神がその力のほとんどを使い、世界の崩壊を食い止め、お隠れになったと聞く……」


 大介は反射的に、サキュレの方を向いた。

 すると、女神は顔を真っ赤にして明後日の方に目をやっている。


「……なんだ、いいとこあるじゃんか」


『バーカ、アタシ様の偉大さがやっとわかったか。まぁ、デスマースの奴らは、いろんな種族がいて面白いからな。死なすにゃしのびな……いや、面白くなかっただけだ。だからっ、こっちを見るんじゃねえ!』


 ゆでだこのように真っ赤になってるのがあまりにも面白くて、大介はわざと凝視した。


 するとサキュレは反撃とばかりに水着のような衣服を引きおろし、その眼前におっぴろげて見せた。


 今度は大介が顔を真っ赤にする番だった、

 ギマリリスたちからは、大介が一人で赤くなって大騒ぎしているようにしか見えなかったが――


「あー、えっと、とにかく、オレはサキュレの導きでこっちに来たし、今も横で浮いてるのは事実だ」


 おっぴろげしていることには言及しない。

 ほかの人に見えなくてよかった。


 一方、なるほど、と深く頷くギマリリス。


「サキュレ様の勇者であれば、下名としても文句など何もない! 喜んで軍を抜け、貴方の旗下に入らせて頂く! このギマリリス、今より貴方の剣となり盾となり、妻となろう!」


 彼女はひざまずいて三つ指をつくと、尻尾をふるふると振った。


「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ! 何よその妻っていうの!?」


「そうですよぉ! 何をどさくさに言ってるんですかぁ! 私がお呼びした勇者さまなんですから!」


 またしても三人が姦しく騒ぎ始めた。


『イヒヒ、どうだ? ハーレムものの主人公みたいだろ?』


「……なんというか、ハーレムっていうより女子部の顧問って感じだ……」


 年不相応の気苦労を滲ませて大介は呟いた。


『だからそういうことじゃねえーーーっ!!』


 サキュレの叫びが平原に木霊した。

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