第30話 エロ無しラブコメ漫画の長期連載の主人公くらい、見てるとイライラするぜ
「知ってるのか!?」
『神は別に寝なくてもいいしな。暇なときは寝るがよ』
「どっちに行ったんだ? アマゾオンの本国に戻ったのか?」
『教えてください女神様と言え』
「教えてください女神様」
大介は間髪おかず、そして感情を込めずに言った。
『お前……そういうのは嫌がるそぶりが楽しいんだろうが、なんにもわかってねえな。嫌がりながらも、心は屈服していく、その感じがいいんだろうが……はぁあ』
深くため息をつきながら、ふわふわと上下する。
『まぁいい。教えてやる。アマゾオンたちは別の拠点に帰された。あのケガでよくやるわと思うが、ここじゃ屋根すらねえからな……比較的元気なやつらが指笛で馬を呼び寄せて、それに同乗してったんだ。あれだけドタバタしてて起きないお前の方がすごいぞ』
呼び戻せた馬も全てではないだろうが、一頭や二頭でもない。
それで起きないほど、大介は疲労困憊で深い眠りに落ちていたわけだ。
「そ、そうなのか……ポロリュテーもか?」
『アイツは、アーク王国の首都のほうに向かってった。たぶん、魔族が侵攻するのはそっちだって考えたんだろうぜ。北の魔族領から出てきてここでぶつかるってことは、向かう先はアークしかねえ。じゃなきゃ直接アマゾオンのとこに来てるはずだ。まぁ大方そう考えたんだろうよ』
「……ってことは、ポロリュテーは独りで王都に行ったのか……! 無茶だ!」
『アイツも王だからな。復讐……というより報復だろう』
「だからって……なんで俺を置いてくようなマネを……」
『アホか。巻き込みたくないから以外に何があんだ。そういうの察する力がねぇから童貞なんだぞ』
「……っ」
大介の握り締めた拳は、力を入れすぎて白くなっていた。
「さて、王都はあっちだっけ? 準備しましょう」
ルサシネがあっけらかんと言った。
「え?」
「何よ、今アンタが言ったんでしょ? そのアマゾオンの女王とやらは、アークの王都に向かったって。どうせ助けに行くつもりでしょうが」
「……!」
図星であった。
図星ではあるが、同意してもらえるなんて思いもしていなかった大介は、虚をつかれて目をむいた。
「な、なんですかぁ、その顔。も、もしかして、私たちがついて行かないって、思ったんですか? ひどいですぅぅ……」
ホルシュの眼鏡に雫が浮かぶ。
「う……正直、そうだ。でも、何で……だって、アマゾオンはそっちには関係ないだろ」
「バカじゃないの? アンタ一人行かすなんて心配に決まってるじゃない」
「わ、私は、勇者さまの従者ですから……」
その後に二人とも小声でごにょごにょ言っていたが、大介には聞き取れなかった。
近寄って行ったサキュレは聞き耳を立てており、ニヤニヤしていた。
だいぶ元気を取り戻しているあたり、好みの話だったのだろう。
『イヒヒ、やっぱお前ら面白れえな』
「何がだ」
『お前も、積極的になるべきだぞ。なんつーか、エロ無しラブコメ漫画の長期連載の主人公くらい、見てるとイライラするぜ』
「だからどういうことなんだよ」
「……勇者よ。さっきから何を言っている。お前には、何か見えているのか?」
空中に話しかける大介を、怪訝そうな顔でギマリリスが見ていた。
「あ、ああ。自称・神のサキュレが憑いてるんだ」
「なんだと!?」
彼女は飛び上がらんばかりの驚きようで、ガタガタ震えだした。
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