第26話 一生童貞だなお前
「オレは、幼き頃から誇り高きアマゾオンの女王として、ふさわしい夫を夢想してた。女神ノルマリスに勇者を夫とする誓いすらしたさっ。……でも、当世の勇者は女。オレは悲嘆に暮れていたものさ。女神に誓った以上、翻すわけにはいかない。次代の女王を残せない王なんか消えたほうがいいかもしれないと思ってさ、あてどなく荒野を流離ってたんだ。……でも、神はオレを見放しはしなかった。オレの前に勇者を遣わしたんだっ」
振り返ったポロリュテーの笑みは、神々しいまでに晴れやかった。
小麦色の肌に桜色がさす。
「魔族が将軍、ギマリリス。噂に違わぬ強者だったさ。勇者マカナを倒したくらいだからなっ。けどさ、それすら打ち倒しただあなたの姿を見たとき、オレの胎がうずくのを感じたものさっ。胸の高鳴りよりも強く強く。てなわけであなたはオレのダーリンだっ」
「あっ、これ話聞いてもらえないやつだ」
大介もだいぶ慣れていた。女体はともかく、強引な女性の性格に。
『ま、でもいんじゃね。セックスだけが仕事だし、気楽なもんだろ』
馬の背によじ登ってきたサキュレが言う。
「おいおい……」
『お前みたいなヘタレ野郎は、こんくらい強引な奴に押し倒されるくらいでちょうどいいんじゃねえの』
「なんか違うんだよ……なんか……」
『一生童貞だなお前』
サキュレは別にポロリュテーを止める気はないらしい。
馬の尻尾に掴まってまでついてきたのは、かぶりつきで見たいという、ただそれだけらしかった。
「なにをもごもご言ってるのさっ? 背中に息が当たってくすぐったいぞっ。まったく、ダーリンは甘えん坊だねっ」
ぐい、と大介の体を更に引き寄せる。
あまりに密着させるので、体が反応してしまう。
「ちょっ、近い、近いって!?」
「お、尻に当たっているのはあれだろっ。元気で結構結構っ」
「普通、そこはキャーじゃないの!?」
「はっはっはっ、アマゾオンを舐めんなっ。猛り立つものなんか、頼もしいくらいさっ。母上は、元気なのは何度も使えてお得って言ってたしっ」
「やばみしか感じない」
「まぁ、焦らない焦らないっ。アマゾオン軍の野営地が近くにあるんだっ。魔族の南下で進めなんだ、まだ留まってるはずさっ。本陣ならば周りを気にしないでで子作りできるぞっ」
にこにこと、まるで遠足の前の子どものように健やかなる笑顔で言う。
本陣がどういうものかはわからないが、移動を前提としている以上、簡易的なものだろう。テントに近いのではないだろうか。
つまり、声だって丸聞こえに違いない。
そんなところで致すと考えるだけで、大介の背筋を冷たいものが走る。
「!?」
しかし、顔を青くしたのはポロリュテーのほうであった。
息を飲む音に大介が疑問をもつより早く、あるいは彼がポロリュテーと同じものを見るより早く、彼の鼻をつくものがあった。
それは、煙の臭いだ。
同時に眼前に現れてきたのは、たなびく煙と、燃え上がるテントの群れだった。
「野営地が燃えてるっ!!」
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